【業界研究】電力業界の現状・動向・課題について

電力業界の現状

電力業界を語る上で忘れていけないのが、東日本大震災です。東北地方を襲った未曾有の大地震は原子力発電所の安全神話を崩壊させ、国内にある全ての原子力発電所が停止する事態にまでなりました。その結果、電力業界内で進んだのが火力発電へのシフトです。

しかし、火力発電は、円相場の動きの影響を大きく受けやすいもので、使う燃料が高騰したことを受け、電力会社各社の経費が増大しました。同時に収益が低下して、各社が決断したのが電気料金の値上げです。

一時期は「オール電化がいい」と世論の支持を受けていた電力業界ですが、東日本大震災を機に「ガスのほうがいい」「値段を考えると電気は劣勢だ」という声が強くなりました。そんな混沌もあり、現在は少しずつ原子力発電所の稼働を容認する声も出つつあります。しかし、電力業界が以前の勢いを取り戻すには、もう少し時間がかかりそうです。

そんな中、ひとつの大きなできごとがありました。平成30年を区切りにして、電力の自由化を実現することです。実は、平成12年3月に一部分だけ電力の小売が認められたのですが、当時はそこまで大きなニュースにはなりませんでした。

しかし、近年は電力の自由化を推進する声が多くなっており、平成28年に電力の小売を完全自由化すること、平成30年には電気料金の自由化を実現することが決まりました。

現状1:基本情報

電力の自由化が実現すると、価格の競争やサービスの競い合いが激化することになります。今までは業界トップに君臨する少ない会社が電力業界の動向に大きな影響をもたらしていましたが、今後は、電力の自由化に伴ってビジネスモデルも大幅に変わることでしょう。

消費者にとっても「いろいろ調べた結果、この会社の電力が一番安いから、ここにしよう」と、選択できる時代が来ると思われます。しかし、火力発電所における燃料費の問題は依然として解決されておらず、各社がどう動くか注目を集めています。

電力業界全体として目指すべきは、消費者にとって適正なサービスを想像することです。また、価格の面でも消費者の支持を得られる状態にすることです。電力の自由化は始まったばかりなので、いつ正解を出せるかはわかりませんが、電力業界全体として取り組む価値はおおいにあります。

これからは、一層消費者に目を向けた事業展開をする必要が出てくるでしょう。下記に電力業界を構成する11社の売上高合計に基づく業界データを記載します。

  • 業界規模:20兆5,490億円
  • 労働者数:124,174人
  • 平均年齢:41.5歳
  • 平均勤続年数:20.9年
  • 平均年収:694万円

現状2:業界シェアランキング上位3位

第1位: 東京電力

売上高は6兆6,314 億円。東日本大震災で原子力発電所に事故が起きて、一時期は厳しい立場になったものの、強い企業力で業績を回復してきています。電力業界の中でも一番大きな規模の会社になるので、業界研究の対象として取り上げるのは必須。皆さんの知らない電力業界の事実がたくさん浮き彫りになってくることでしょう。

第2位: 関西電力

売上高は3兆3,274億円。関西地区だけでなく、全国でも知らない人はいない、と言われるくらいの知名度を誇る会社です。関西地区で使われる電力のほとんどを供給しており、会社の規模自体も業界内でトップクラスの大きさ。

磐石な経営基盤を確立しています。電力業界における影響力も大きなものを持っており、常に、動向が注目されている会社です。

第3位: 中部電力

売上高は2兆8,421億円。愛知県名古屋市に本社を起き、中部地方に電力を供給している会社として知られています。磐石な経営基盤を構築しており、安定的な業績を残し続けている会社で、毎年、就職先として多くの学生から人気を集めている企業です。

最近はプロモーションにも注力しており、企業として新しい一面を見せようとしています。これらのチャレンジ精神も、社会から支持を獲得している理由のひとつです。

現状3:平均年収ランキング上位3位

第1位: 中国電力

平均年収は788万円。中国地方の法人・個人に電力を供給しており、電力業界内でも安定した業績を残し続けている企業として知られています。就職先としての人気も非常に高くて、毎年、多くの学生が中国電力の選考に参加しています。

電力業界内で平均年収が一番高いことに加えて、待遇・福利厚生も充実しており、長く働き続けることが可能。

第2位: 中部電力

平均年収は779万円。電力業界内でも有数の規模を誇る中部電力は、待遇・福利厚生などが充実している企業としても知られています。休日の数、手当の種類などは電力業界内でも指折りの充実度で、従業員の平均勤続年数も長く、新卒で入社してそのまま定年退職を迎える人も少なくありません。

平均年収も電力業界内の平均を上回っており、長く働ける会社として電力業界のみならず世の中でも知られています。

第3位: J-POWER(電源開発)

平均年収は773万円。電力業界の中では中堅に位置する会社です。「民間企業」の色が濃い体質が、新しいことへのチャレンジ精神を醸成。数々の新規事業を展開して、企業の柱を着実に増やしています。

それらを通じて出た利益は社員に還元。電力業界の中に限らず、社会一般の平均年収よりも高い数字になっています。これからも業績が伸びれば、平均年収はさらに高いものになるでしょう。待遇・福利厚生も充実している会社なので、腰を据えて働くことが可能です。

業界の動向

現在、電力の供給状態が万全であるかというと、答えは「いいえ」。原子力発電所の操業停止は今もなお続いており、それをカバーする火力発電所に大きな負担がかかっているのが事実です。電力の供給力不足、供給安定性の低下、経済性の悪化、環境性の悪化というのは、電力業界として解決しなければならないテーマです。

しかし、原子力発電所をいつ操業できるかの目処も立っていません。これまで「安全性の確保を大前提にエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」として位置づけられていた原子力発電所の操業停止がもたらす影響は、今までだけでなく、これからも大きくなると考えられます。

原子力に代わる発電の仕組みを開発するのか。また、水力や風力、太陽光発電などの力を伸ばすのか。電力業界各社は、いつも判断に迫られています。

動向1:市場動向

原子力発電所の問題については、2012年に導入された再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)をはじめとした再生可能エネルギー政策の修正、環境への適合も考慮に入れた石炭利用計画の策定なども急務になると思われます。

また、安全が確認された原子力発電所については再稼働をするなど、様々な動きが出てくるでしょう。その際には、社会・地域との調整が必要不可欠になるので、これらの動きが現実化するまでにはもう少し時間がかかりそうです。

そんな中、電力業界で大きなテーマになっているのが、電力の自由化です。異業種との複合的なサービスも誕生する可能性があり、業界内においても新しい可能性が次々に誕生するかもしれません。

また、既存のメニューについても一層細かく設定したり、需要側が需給を調整するネガワット取引をするなど新たな観点のサービスを展開することも可能になりました。より顧客目線のサービスを創造したら、現在の電力業界におけるヒエラルキーに関係なく、大幅なジャンプを実現できる可能性もあります。

動向2:業界の課題

前述したとおり、原子力発電所の事故に伴う原子力政策の見直しは電力業界全体にとって大きな課題です。また、再生可能エネルギーの大量投入、火力電源の親切、リプレイス、地域間における送電網の拡充など、多くのコストを要する対策がたくさんあります。これらの対応をいかにして実施するか。

また、誰が進めていくかを決定しなければならないなど、実行に移す前にもすべきことがたくさんあります。電力広域的運営推進機関(広域機関)の設立や送配電部門の法的分離(発送電分離)などのシステム改革も重要になってくるので、より一層の資金を確保する必要があります。

しかし、電力事業は収益性が高いものではありません。これらのコストアップを事業者の経営合理化などで収縮できるかというと「難しいのではないだろうか」というのが大半の意見です。これからは、そもそもの利益をどう確保し、アップさせるか、という観点も重要になってくるでしょう。

動向3:業界の今後の将来性

2016年4月から始まった電力の小売全面自由化は、これからの電力業界において大きな影響を及ぼすことになるでしょう。電力業界に属する中小企業も電力の販売を始めており、今後、サービスや価格の競争が更に強くなると思われます。

また、電力の自由化に伴い、これまで電力業界の外にいた企業が多く参入するようになりました。東京ガスや大阪ガス、ENEOSでんき、auでんきなど、都市ガスやガソリン、通信会社…参入している企業の種類もさまざまです。

 

この事実が示すのは、電力業界は他の業種の企業にとっても非常に参入しやすい業界であることです。今まで電力業界を構成してきた企業は、外から攻めてきたこれらの企業とどう対峙するか、どのような策を講じて対抗するか、電力業界全体をどう盛り上げていくのかなど、様々な意味で目が離せない業界であると言えます。

 おすすめの業界研究本

3時間でわかるこれからの電力業界 ―マーケティング編―5つのトレンドワードで見る電力ビジネスの未来 (NextPublishing)