【業界研究】重電業界の現状・動向・課題について

業界の現状

重電業界の歴史

重電とは、電気機械のうちとくに大型のものを指します。テレビ、洗濯機、電気調理器具、空調機器といった家庭で使われる電気製品(通称、家電)を軽電製品と呼びますが、それに対応する形で発電施設や工業施設、商業施設などで用いられる設備が重電と呼ばれます。

わが国の電気機械産業の歴史は古く、その成り立ちは明治時代まで遡ることになります。明治維新後の、政府の殖産興業政策とともに重電機器工業が生まれ、中核産業として発電機・電動機産業が発展する流れで重電業界が形成されていきました。

重電業界はその後、第二次世界大戦後の経済復興や高度経済成長期の重工業化による電力需要・重電需要のもとで急成長を遂げ、1980年代後半のバブル経済時の需要増や省力化といった民間設備投資の活発化を反映しながら順調に規模を拡大し、現代に至ります。

近年では、2008年のリーマンショック後に、新興国の台頭もあって経営的に後退しますが、その後の合併や買収を通じた経営再建策、在庫の適正化、適切な設備投資などの効果もあり、現在、生産額に拡大の兆しがみえてきています。

重電機器の分類

重電機器は、発電設備、送電設備、配電設備に大きく分類されます。

発電設備

火力発電所、原子力発電所、風力発電所、地熱発電所など

送電設備

変圧器、高圧遮断器など

配電設備

スイッチギア、ガス絶縁開閉装置など

重電機器メーカー5社

日本国内においてとくに高いシェアを誇る5社を、重電5社と呼んでいます。

  • 日立製作所:火力などの電力設備事業を三菱重工業と統合
  • 三菱電機:発電、送変電、配電まで総合的なシステムに強み
  • 東芝:発電プラントに強み。米GEと火力発電で合弁設立
  • 富士電機:中型重電。中小型の火力発電設備や地熱発電に強み
  • 明電舎:変電機器、EV向け電機品に強み、東芝と水力発電分野で提携

重電業界は、世界規模で市場を拡大しており、海外にも有力企業がたくさん存在しています。以下、海外重電機器メーカー5社になります。

  • GE(General Electric、米):発電プラント、石油ガスに強み
  • シーメンス(独):発電プラント、超高圧送電に強み。インフラ&都市で新たな事業部門も設立
  • アルストム(仏):発電機やボイラー、鉄道車両などの交通システムの設計や施工
  • ABB(スイス):超高圧送電に強み。ブラウン・ボベリ社とアセア社(スウェーデン)が合併して誕生
  • 現代重工業(韓):世界最大の造船企業

基本情報

  • 市場規模:5兆8,702億円
  • 労働者数:117,527人
  • 平均年齢:41.9歳
  • 平均勤続年数:18.2年
  • 平均年収:748万円

すべての数値が高水準になっています。平均年齢が高く、平均勤続年数も長いので、働くための環境は整備されているとみていいでしょう。重電業界は、1世紀以上もの長い歴史を持ち、業界の主要メーカーも古参メーカーがほとんどなので、安定性という点では優秀な業界と言えます。ただ、部署によっては忙しい部署もあり、なかなか休みをとることができないという声もあるようです。

仕事内容

重電業界の職種は、主に研究職、設計職、生産職、営業職に分かれています。

研究職

技術開発や素材・製品の研究を行う仕事です。内容は基礎から応用までと幅広く、クリエイティビティとチャレンジ精神が求められます。

設計職

機器・システムの企画・開発から製品化までを手がける仕事です。日進月歩で進化する技術を取り入れて、世の中に新しい価値を提供しなければなりません。

生産職

資材調達、生産管理、生産技術、品質保証といった職種に細分化されますが、要は、需要に応じて製品・システムを生産する仕事です。

営業職

市場のニーズを読んで、製品・システムを企画し、お客さまに提案する仕事です。自社のことだけではなく、お客さまと社会を考えて行動することが大切になります。

業界シェアランキング上位3位

1位:日立製作所:2兆2,239億円
2位:東芝:1兆8,122億円
3位:三菱電機:1兆1,712億円

平均年収ランキング上位3位

1位:日立製作所:827万円
2位:東芝:811万円
3位:三菱電機:746万円

業界の動向

アルストム争奪戦

仏アルストムの火力発電設備などのエネルギーインフラ部門をめぐる争奪戦は、米GEに軍配が上がりました。

独シーメンスは三菱重工と協働しGEに対抗しましたが、失注しました。これは、シーメンスがアルストムを買収すると、欧州の火力発電設備市場でシーメンスのシェアが高くなり、欧州委員会が定める独占禁止規定に抵触する恐れがあると仏政府が懸念したためです。

アルストムは火力発電設備を中心とするエネルギーインフラと鉄道車両などの交通システムの世界大手ですが、欧州経済危機などの影響でエネルギー部門の受注が減少し資金繰りが急速に悪化したことが、今回の事態を招きました。

これにより、GE・アルストム連合の事業規模は3兆円近くに達し、三菱重工(日立製作所との事業統合後で約1.2兆円)との差は一段と広がりました。そして三菱重工は、欧州進出の機会を失っただけではなく、アフリカ、中東といったアルストムが保有する新興国地盤もGEに奪われる結果となったのです。

市場動向

重電業界の国内市場は微減にて推移

2015年の国内市場は、前年比1%減の1兆7,374億円となりました。

内訳をみると、
原子力機器は増加(前年比17%増)
送変電機器は微減(同1%減)
発電機器は減少(同21%減)
となっています。

原子力機器の増加は原子力施設再稼働対応及び廃炉対応等の影響が要因であり、発電機器の減少は2017年に運転を開始する予定の発電所がないことが要因と考えられています。

業界の課題

ハードウェアを中心とするスタイルからの脱却

日本の重電業界は製品の性能のよさで市場を広げてきましたが、韓国や中国などが猛追の動きをみせています。

両国はまさしく国を挙げて重電機器産業を展開しており、とくに交通システムの分野においては、中国重電各社が中国国内でM&Aを繰り返して巨大化し、国際競争力を持つようになっています。

さらに、注目しなければいけないのは、社会インフラにとっては製品だけではなく、運用・サービスも重要になるということです。性能がよいガスタービンや原子力発電所が導入されても、電力というサービスを安定して供給できる運用技術がなければ意味はありません。

GEはアルストムの火力発電事業を買収した後、アルストムの地元である欧州とアフリカ、中東を中心に、「インダストリアル・インターネット」という重電機器とビッグデータを結びつけるネットワークを確立し、顧客データを分析することで顧客の生産性を高める運用・サービスを開始しています。

重電業界の世界的な市場が大きく変化を遂げようとしているなか、ハードウェア中心に展開する日本の重電メーカーは苦境に立たされています。

業界の今後の将来性

新興国を拠点とした戦略に切り替える必要あり

米GEと独シーメンスを中心に重電業界は世界的な拡大を続けていますが、現在、最も注目されているのが新興国市場です。新興国の中には、電力自由化政策により、海外事業者にも発電開発への参入を認めている国があり、新興国市場での受注数によって今後の業界の体制が決まるといっても過言ではない事態を迎えています。

近年、中国重電企業が相当な勢いで技術的追い上げをみせていますが、この追い上げの背景には、自国市場における重電機器の大量生産、発電所建設の経験とノウハウの蓄積があると考えられています。

しかし、日本の重電業界は高い技術力を活かした高度な製品には強みがあるものの、新興国のレベルに応じた重電製品を大量生産することには慣れていません。日本の重電業界の未来は、新興国を新たなビジネスの拠点とし、そこから新興国の要求するレベルに応じた製品を、さらに競争力のある価格でグローバルに展開できるかどうかにかかっています。

IoT技術の活用による差別化ができるか

IoT技術の活用とは、発電機のみならず、発電所全体の運転を安全にできるようにするサービスのことを指します。

上記でも述べたとおり、交通システムや電力などの整備には高性能な製品も重要になりますが、顧客にとっては運用・サービスに関するノウハウがそれ以上に重要になります。石炭火力発電、原子力発電等の発電所の最適運転・予兆運転といった安全運転の分野において、日本の重電業界が優れたサービスを開発できれば、米GEや独シーメンスとの差別化も可能となり、さらなるビジネスチャンスとなるのは間違いないでしょう。

おすすめの業界研究本

『日経業界地図 2017年版』日本経済新聞社

日本経済新聞社の記者が徹底取材をして、日本の180業界の最新動向や課題、将来の見通しを解説しています。企業間の相関図、企業・製品のシェア、業界のトレンドを示す表やグラフがビジュアライズされており、業界のことが一目でわかるようになっています。業界研究をするにはまず目を通しておきたい1冊です。

『会社四季報 2017年 2集春号』東洋経済新報社

国内の全上場企業の業績予想を中心に、所在地から財務情報まで、会社のことを知るのに欠かせない情報をまとめたハンドブックです。就職活動における業界研究から、株式投資といったビジネスユースに至るまで幅広く使えるのが人気の理由です。

『異端児たちの決断 日立製作所 川村改革の2000日』小板橋太郎

2009年に7,800億もの赤字を出した日立製作所の経営改革について書かれた本です。重電業界のなかの1社である日立の、さらに経営という分野だけにスポットライトをあてていますので、業界研究をするには情報的に物足りない内容になりますが、日立という巨大企業グループの内情についての記述も多いので参考程度に読むことをおすすめします。

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