【業界研究】素材業界の現状・動向・課題について

業界の現状

素材とは

素材産業とは、他の産業に素材を供給する産業のことを指します。

例えば家電・自動車といった工業製品や、コンビニで売られている弁当・飲料等は製造メーカーが何らかの素材を加工して製造したものになりますが、製造メーカーが使いやすいように資源・原料を加工して素材にするのが素材メーカーの役割になります。

ただし、一言に素材といっても様々なものがあります。化学、繊維、鉄鋼、非鉄金属、金属製品、ガラス、セメント、紙・パルプ、ゴム・タイヤなど。ですので、製造メーカーと同様に、素材メーカーも数え切れないほど存在しており、その素材メーカーがまとまって素材業界を形成しています。

素材業界の主要メーカー

鉄鋼

・新日鐵住金:国内1位。新日鉄と住金が統合
・JFEホールディングス:国内2位。川崎製鉄とNKKが統合
・神戸製鋼所:鉄鋼、非鉄、機械に加え、発電事業を拡大
・日立金属:日立系。日立電線を吸収
・日新製鋼:日新製鋼、日本金属工業が統合

非鉄金属

・住友電気工業:伸銅、電線に強み
・三菱マテリアル:伸銅、セメント、工具など多角経営を展開
・JXホールディングス:銅製錬技術に強み

セメント

・太平洋セメント:98年秩父小野田と日本セメントが合併
・宇部三菱セメント:98年三菱マテリアルと宇部興産が販売部門を統合
・住友大阪セメント:94年大阪セメントと住友セメントが合併

紙・パルプ

・王子ホールディングス:国内1位。紙・板紙の生産量国内トップ
・日本製紙:国内2位。印刷用紙の生産で国内トップ
・レンゴー:国内3位。段ボール最大手

基本情報

  • 市場規模:82兆1,896億円
  • 労働者数:49万1,592人
  • 平均年齢:40.4歳
  • 平均勤続年数:15.8年
  • 平均年収:566万円

すべての産業を支えているだけあって、市場規模がすごいことになっています。この数字は、化学業界、繊維業界、鉄鋼業界、非鉄金属業界、金属製品業界、ガラス業界、セメント業界、紙・パルプ業界、ゴム・タイヤ業界の9つのデータをまとめたものです。

ここで注視できるのが、9つの業界において、市場規模と労働者数は業界によってその値がまちまちなのですが、それ以外の数字に関しては、どの業界も同じような値になっていることです。

平均年収にしても、トップが化学業界の610万円に対して、最下位が繊維業界の533万円であり、その差額はわずか77万円で、そこまでの差にはなっていません。平均年収の数字がほとんど変わらないということは、素材業界のビジネスモデルがやはり共通しているということであり、またそこまで大きな数字にもなっていないことから、そのビジネスモデルが薄利多売であるということもできるかもしれません。

仕事内容

素材業界の職種は、主に技術系と営業系に分かれています。

技術系

技術系の仕事は研究、開発、生産、設備に分類されます。素材の製造が主要業務ですので、まず素材の原料を仕入れるところからはじまり、仕入れたら搬入して製造するという流れになります。そして、素材そのものではなく、その製造に必要な施設・設備の保全や、新規設計・製造も必要になります。

営業系

製造したものを売る仕事になりますが、素材メーカーの多くが受注生産であるため、営業の成果がそのまま製造過程に反映されます。ある意味、他業種の営業よりも重要な業務です。そして、販売すればそれを顧客まで搬入する必要があり、物流業務とその管理業務が発生します。

業界シェアランキング上位3位

1位:新日鐵住金:5兆5,161億円
2位:ブリヂストン:3兆5,680億円
3位:三菱ケミカルホールディングス:3兆4,988億円

平均年収ランキング上位3位

1位:JXホールディングス:1,157万円
2位:三菱ケミカルホールディングス:1,066万円
3位:LIXILグループ:1,026万円

業界の動向

新日鐵住金を中心とした業界再編

高炉業界では、国内生産拠点を集約化して効率化を図る動きが加速しています。

高炉業界最大手の新日鐵住金は、2016年に同4位の日新製鋼を子会社化することを発表しました。これは、日新製鋼の高炉回収費用の削減と、新日鐵住金の高炉稼働率向上などによる相乗効果を追求したもので、これにより高炉業界は大手3社に集約されることになりました。

また、大阪製鐵による東京鋼鐵の子会社化、合同製鐵によるトーカイの子会社化など、業界再編の動きが進んでいます。

高付加価値セメント製品

セメント各社が、高機能のセメントやコンクリートの開発・販売を進めています。

太平洋セメントや三菱マテリアルは、超高層建築向けのコンクリート用セメントの販売に注力しています。また、住友大阪セメントは環境に配慮した河川向けコンクリートを開発し、販売をはじめました。これは、生物の生態系を損なわないことを目的とした製品であり、各社は高付加価値製品で売上の増加を図る考えです。

製紙大手が海外事業を強化

製紙業界は、内需型産業といわれ、各企業の海外進出は出遅れていましたが、国内市場が飽和していることもあり、大手を中心に海外市場に活路を求める動きが増えています。

王子ホールディングスは、ミャンマーやベトナムに進出し、また2014年には、ニュージーランドの製材大手カーター・ホルト・ハーベイから紙パルプ・段ボール事業を買収して、海外比率を高めています。

大王製紙は、紙おむつの販売が好調で、2015年度の海外売上高比率が5%を超えました。

日本製紙は2015年に中国の段ボール原紙メーカーと資本・業務提携を解消し、東南アジアに経営資源を集中させる考えです。

市場動向

素材業界の市場規模は縮小基調

日本鉄鋼連盟の「鉄鋼需給統計」によると、2015年度の国内鉄鋼生産量は前年比5.1%減の1億423万トンとなり2年連続で前年度を下回りました。国内の主要需要分野である製造業向け鉄鋼、建設向け鉄鋼ともに受注が大きく落ち込んだことが最大の要因です。

経済産業省「工業統計表 産業編」によると、2013年度の伸銅品製造出荷額は7,792億円で前年比1.1%増、アルミニウム品製造出荷額は8,384億円で同0.1%減となりました。

セメント協会「セメント需給実績」によると、2015年度のセメント生産量は5,923万8,000トン(前年比3.1%減)、販売量は5,293万トン(同2.8%減)と、ともに2年連続で前年度実績を下回りました。民間需要は堅調だったものの、国内公共事業の減少や建設現場での人手不足による工期の長期化などが影響したと見られています。

経済産業省「生産動態統計」によると、2015年の紙・パルプの生産量は2,622万8,066トン(同0.9%減)となりました。新聞・雑誌の市場縮小や、広告のネット移行などがその要因となっています。

素材業界の多くの部門が縮小基調にあり、国内市場も飽和状態となっているため、現在の経済環境下では大きな成長は難しいと考えられています。

業界の課題

素材ビジネスであるがゆえに生まれるデメリット

素材業界の扱う商品はあくまで素材であり、消費者向けの製品を製造販売しているわけではありません。鉄であれ銅であれ、自動車や家電などを作っている製造メーカーに販売するのです。

その結果、素材業界には2つの傾向が生まれます。

1つは、経済動向に大きな影響を受けるということです。つまり市況産業ということになります。他の製造業のように売れ筋商品がいくつかあってというわけにはいきません。経済が好況で、素材の需要も右肩上がりというような状況であるならば、素材業界の景気も右肩上がりに上昇します。

ところが、好況から転じて経済が安定期に突入すると、それに呼応するように業界も苦しくなり、大幅なリストラや生産調整などを行なって経営を成り立たせなければならなくなります。素材の生産量は減少し、買い手市場になって製造メーカーから買い叩かれ、価格の下落を迎えるという負のスパイラルに陥るのです。

もう1つは、素材単価が比較的廉価だということです。製造メーカーの場合、素材メーカーから仕入れた素材を加工することでその価格を上げることができますが、素材業界の場合はそれを行うことができません。

素材というものの特性上仕方のないことではありますが、こういった問題に対して素材業界全体で対抗策を考えなければなりません。

業界の今後の将来性

技術力の向上と継承

素材業界は、顧客が要求する「高品質で多品種少量生産」への対応を強化することで、現在の国際競争力を身につけてきました。今後も先駆的な顧客との連携を深め、より高度な加工技術を必要とする製品に特化するなど、競争力を高めていく必要があります。

また、それらの技術を次の世代につなげていくための人材育成・教育等を行い、ノウハウを継承していくことが大切です。

さらなる効率化を

価格・コストの観点から、新興国を中心とした海外への生産拠点のシフトを進めなくてはなりません。また、業界全体として、流通経路のスリム化によるEDI(商取引のための各種情報をネットワークを介してコンピュータ同士で交換すること)やモーダルシフト(トラックによる幹線貨物輸送を大量輸送が可能な海運または鉄道に転換すること)を含めた流通コストの削減、アライアンス(企業同士の提携)による規模の拡大といった課題にも取り組んでいかなくてはなりません。

おすすめの業界研究本

『日経業界地図 2017年版』日本経済新聞社

日本経済新聞社の記者が徹底取材をして、日本の180業界の最新動向や課題、将来の見通しを解説しています。企業間の相関図、企業・製品のシェア、業界のトレンドを示す表やグラフがビジュアライズされており、業界のことが一目でわかるようになっています。業界研究をするにはまず目を通しておきたい1冊です。

『会社四季報 2017年 2集春号』東洋経済新報社

国内の全上場企業の業績予想を中心に、所在地から財務情報まで、会社のことを知るのに欠かせない情報をまとめたハンドブックです。就職活動における業界研究から、株式投資といったビジネスユースに至るまで幅広く使えるのが人気の理由です。

『鉄と鉄鋼がわかる本』新日鉄住金株式会社

鉄鉱石という鉱物資源から鉄鋼という工業材料がどのように製造されているのかがわかりやすく解説されています。これは新日鉄住金のPR誌の連載記事をまとめたものであり、とうぜん鉄及び鉄鋼業界についての説明に終始していますが、素材という点でみればすべて同じともいえますので、鉄鋼業界だけではなくそれ以外の素材業界を志望されている方も業界研究の参考として目を通してみてはいかがでしょうか。