【業界研究】OA機器業界の現状・動向・課題について

業界の現状

OA機器業界の変遷

OAとは「Office Automation」の略であり、OA機器は企業などで事務処理を効率良く行うために用いられる機器の総称になります。

その由来は、戦後の日本経済発展のなかで、事務量が増加、複雑化し、作業の効率化・合理化が図られるようになったことにあります。

当初の事務用の機器はほとんどが輸入品でしたが、1960年にビジネス機械・情報システム産業協会が設立され、事務用機器が機械工業振興法の合理化促進機種に制定されたことにより新技術・新製品の開発が進みました。

そして、1980年代後半には日本語ワードプロセッサ、高性能複写機、高機能ファクシミリが普及して「OA革命」と呼ばれる時代を迎え、OA機器やその開発メーカーを含めたOA機器業界が形成されていったのです。

OA機器の品目

OA機器の種類としては、主に以下のものがあります。

    • 複写機・複合機(モノクロ・カラー)
    • ページプリンタ(モノクロ・カラー)
    • データプロジェクタ
    • 電卓・電子辞書

<li金銭登録機(ECR/POS)

  • デジタル印刷機
  • シュレッダ
  • タイムレコーダ

主要大手メーカー

OA機器業界の主要メーカーとしては、キヤノン、リコー、コニカミノルタ、シャープ、富士ゼロックス、ブラザー工業などがあります。

キヤノン

カメラ・ビデオ・スキャナなどの入力機器から、複合機・プリンタ・プロジェクタなどの出力機器まで、製品はフルラインアップ化

リコー

複合機やデジタルカメラを中心に、国内販売力に定評

コニカミノルタ

業務用デジタル印刷機

シャープ

コンビニ向け複合機サービスに注力

富士ゼロックス

複写機、レーザープリンター中心

ブラザー工業

国内でのプリンター事業が好調

OA機器は電子技術の発達にともない発展してきた産業であるため、やはり電気・家電、または光学機器といった大手メーカーが強く、リコーとキヤノンが最大手となっています。

基本情報

  • 市場規模:1兆5,976億円
  • 労働者数:58,800人
  • 平均年齢:41.5歳
  • 平均勤続年数:17.1年
  • 平均年収:704万円

平均年齢が高く、勤続年数も長いので、働くための環境が整っている成熟した業界ということができます。そして、年収も高く、日本の平均給与を上回っているようです。ただ、金融業界や商社業界と比べると給与の水準は低いという声もあるようで、このあたりはOA機器業界が経営的に苦戦していることに関係しているのかもしれません。

仕事内容

OA機器業界の仕事は、研究、開発、生産、営業、サポートに分かれています。

研究

OA機器の要ともいえる最先端技術開発や基礎研究を行う仕事です。取り扱う分野は、デジタル技術、コミュニケーション技術、新規事業開発等と多岐にわたります。

開発

研究によってもたらされた可能性を具体的なカタチにする仕事です。複合機やプリンターの部材開発が主になりますが、新しい価値を付加しながらも、その技術をより多くの商品に活かすことができるようにしなければなりません。

生産

工場やプラントといった生産現場で製品を製造する仕事になります。品質、コスト、納期の調整といった問題から省エネ、リサイクルといった環境技術まで、対応しなければいけない課題はたくさんあります。

営業

お客さまの仕事を知り、課題を見出して、解決方法を提案していく仕事になります。サービスを提供して終わりではなく、その後のフォローも大切な業務になります。

サポート

お客さまを訪問して複合機等の設置や保守点検、トラブルの対応などを行う仕事です。効率的なメンテナンスを行うことを基本としながら、現場での課題を見つけ、課題解決に向けて情報収集することも必要になります。

業界シェアランキング上位3位

1位:リコー:2兆1,956億円
2位:キヤノン:2兆0,001億円
3位:セイコーエプソン:8,364億円

平均年収ランキング上位3位

1位:リコー:799万円
2位:キヤノン:755万円
3位:コニカミノルタ:725万円

業界の動向

OA機器業界の再編

大手メーカーは、より高度な製品供給体制の確立や製造コストの削減などを目的に、大規模な業務連携を進行させています。

キヤノンは、2009年にプリンター・複合機大手の米ヒューレット・パッカードと提携し、2010年にオランダ印刷機大手のオセを買収しました。

富士ゼロックスも、2010年に豪事務機サービス大手アップストリーム・プリント・ソリューションズを買収しています。

リコーは、2011年に豪事務機販売大手のプリント・ソリューションズ・グループを買収すると、2015年にはオフセット印刷機大手の独ハイデルベルグと販売の提携をしました。

コニカミノルタは2014年に、業務用印刷コンサルティング大手豪エルゴアジアPtyを買収しました。

OA機器業界の国境を超えた再編劇は、生産、販売、サービスといった面での取り組みがとくに目立つ結果となっています。

リコーの中国進出

リコーは2015年から、中国で再生複合機ビジネスを開始しました。

これは、使用済みの複合機を改修して分解、清掃、部品交換、組み立てなどの処理を行い、再び市場に出荷するという事業で、以前から日米欧を中心に展開していたものです。

同社は複合機メーカーとして初めて使用済み複合機の中国への輸入と再生製造の認可を取得したことで、この再生複合機ビジネスを中国で拡大させる方針を固め、さらには他の新興国への拡大も視野に入れてグローバル化を推し進めていく考えです。

[シャープが東証2部に降格]

東京証券取引所は、2016年、東証1部に上場している経営再建中のシャープが、東証2部に指定替えになると発表しました。

これは、シャープが提出した有価証券報告書で、グループの債務が資産を上回る債務超過となったためで、同社が2部から1部に復帰するには、債務超過状態を解消した上で、1部への指定を東証に申請して審査を通過し、承認を得る必要があります。

液晶テレビ「アクオス」で、2000年から家電メーカーのトップに君臨していた優良企業の転落は、家電業界やOA機器業界のみならず、世間一般にも大きな衝撃を与えています。

市場動向

OA機器業界の市場規模は1兆5,976億円

ビジネス機械・情報システム産業協会によると、2015年の事務機械総出荷金額は前年比3.8%増の1兆5,976億円でした。

国内は、前年1〜3月の増税前の駆け込み需要の反動減と景気の停滞から来る足踏みにより同4.3%減、国外は、新興国で複合機・複写機やデータプロジェクタが伸び、円安効果もあって同6.5%となりました。

業界の課題

業界の複合的困難は続く

近年では、市場に若干の回復はみられたものの、OA機器業界にとっては厳しい状況が続いています。

中国の成長鈍化や欧州の経済不況などの影響から、企業はOA機器への投資を控える傾向にあります。また、スマートフォンやクラウドの普及により、紙を使わないペーパーレス化が進行し、複写機やプリンタそのものの需要が減っています。

大手メーカーの多くは、OA機器本体(ハード)の販売をてこにして、インクやトナーといった消耗品(サプライ)やメンテナンスの手数料で収益を上げるというビジネスモデルを作り上げていますが、国内においてはすでに飽和状態となっており、苦戦は今後も続くとみられています。

OA機器開発自体に頭打ちの様相

新興国メーカーを含めた開発競争はますます激しくなっています。

かつてはOA革命といわれるほどの技術力を誇った日本のOA機器メーカーですが、製品の移り変わりや進化のスピードが速くなっていることに加えて、OA機器の開発に頭打ちの様相が出ていることで、新興国メーカーとの差が縮まり、日本メーカーの強みが薄れてきてしまっています。

インターネットの発展にともない、ビジネス環境は大きく変わりつつある昨今、メーカー各社は単なる技術のみではなく、環境変化によるニーズへの機敏な対応が求められています。

業界の今後の将来性

ソリューションプロバイダーへの転換ができるかどうか

2008年のリーマンショック以降、企業の投資抑制の影響もあり、OA機器業界は依然として厳しい状況にあります。

しかし、データプロジェクタといった分野において、従来の事務機器というカテゴリーでは括ることのできない新しい市場が広がってきています。データプロジェクタは、企業内の会議やプレゼンテーションといった用途から教育現場や電子広告といった場面へと活用シーンが広がり、さらなる発展の可能性を見せています。

また、ITを利用することによって、製品の高度化などが進展し、ハードとしての商品力に加えて、ソフトとしてのサービスの重要性も高まっています。従来までは、事務機器はオフィスでの使用を対象としてきましたが、ネットワーク化の波は、働く場所の流動化ももたらしています。個人での起業や在宅の作業の増加に対し、SOHO対応型の新機器・新サービスを開発することで対応していかなければなりません。

今後は、さらに国際競争や技術革新が進むと考えられますが、OA機器業界はさらなる高付加価値サービスで新たなニーズに応えていく必要があります。単なるハードの製作・販売から、ソリューションプロバイダーへの転換ができるかどうかが大きな鍵を握っているといえるでしょう。

おすすめの業界研究本

『日経業界地図 2017年版』日本経済新聞社

日本経済新聞社の記者が徹底取材をして、日本の180業界の最新動向や課題、将来の見通しを解説しています。企業間の相関図、企業・製品のシェア、業界のトレンドを示す表やグラフがビジュアライズされており、業界のことが一目でわかるようになっています。業界研究をするにはまず目を通しておきたい1冊です。

『会社四季報 2017年 2集春号』東洋経済新報社

国内の全上場企業の業績予想を中心に、所在地から財務情報まで、会社のことを知るのに欠かせない情報をまとめたハンドブックです。就職活動における業界研究から、株式投資といったビジネスユースに至るまで幅広く使えるのが人気の理由です。

『日本事務機新聞』日本事務機新聞社

旬刊で発行されているOA機器業界の専門誌です。業界動向、業界ニュース、新製品情報が掲載されています。毎年年頭にOAディーラーへのアンケート調査の結果をまとめた「全国ディーラーアンケート」が掲載されています。一通り目を通せば業界や業界各社の動向が分かるようになっていますので、業界研究にも最適です。