【業界研究】化学業界の現状・動向・課題について

業界の現状

化学の定義

科学とは「物質の性質・構造・反応を研究する学問」と定義され、石油、天然ガス、石炭、水、空気などを原料に、化学反応を利用して私たちの役に立つ製品を作り出す産業を化学工業と呼びます。

化学工業で作り出される製品は、プラスチック、合成繊維、合成ゴム、インキ、塗料、接着剤、農薬、医薬品、化粧品など多岐にわたります。

化学品の種類

化学品はその工程において、主に、基礎化学品、誘導品、最終製品の3つに分類されます。

基礎化学品

石油や天然ガスから最初に生成される化合物を指します。エチレン、ブダジエン、トルエン、キシレン、ベンゼンなどがこれにあたります。

誘導品

基礎化学品に他の分子を結合してできる化合物を指します。基礎化学品と誘導品はコンビナートで一貫生産することが多くなっています。

最終製品

医薬品、農薬、塗料、化粧品などを指します。

基本情報

  • 市場規模:43兆円
  • 労働者数:約86万人
  • 平均年齢:40.6歳
  • 平均勤続年数:15.7年
  • 平均年収:610万円

化学業界のデータですが、何と言っても市場規模の大きさが目につきます。そして、それに比べると610万円という平均年収は少ないようにも感じますが、約86万人という労働者数の多さを考えると妥当といったところでしょうか。

ちなみに、この労働者数の多さは、日本の化学メーカーの数が多すぎることに起因しているとも言われています。化学メーカーの統廃合を促進させてその数を半分にすれば、単純計算で各社の利益も倍増することになりますが、そうすると雇用の大半も失われることになり、このあたりはどうしても難しい問題になってしまいます。

仕事内容

化学業界の仕事は、営業職と技術職に分かれています。

営業の仕事は、顧客に対して自社製品を販売することが基本になりますが、それだけにはとどまらず、顧客と信頼関係を築き、潜在ニーズを捉えるマーケティング機能も担います。そして、製品を生産するためには、工場や研究所に通い、生産に立ち会ったりすることも大切な業務となります。

技術職については、研究、開発、生産、SEなどとさらに細分化されます。必要とされるのは、技術と発想を駆使して画期的な商品を開発することで、社内で解決できない問題は、基礎研究からはじめたり、外部の研究機関と共同で解決を図ったりもします。

業界シェアランキング上位3位

1位:三菱ケミカルホールディングス:3兆4,988億円
2位:住友化学:2兆2,437億円
3位:三井化学:1兆5,660億円

平均年収ランキング上位3位

1位:三菱ケミカルホールディングス:1,066万円
2位:積水化学工業:940万円
3位:旭化成:845万円

業界の動向

米国老舗2社の合併

2016年に、米ダウ・ケミカルと米デュポンが合併し、ダウ・デュポンとなりました。売上規模は、ダウが約600億ドル、デュポンが約300億ドルで、日本円にして約10兆円となり、これまで世界でトップだった独BASFを抜いて、世界最大の化学メーカーとなりました。

合併の理由としては、互いの事業の類似性が低く、補完が見込めることが挙げられます。ダウ・ケミカルの強みは原料分野、一方のデュポンの強みは最終製品という構造でした。

三菱ケミカルの戦略

国内でも、2016年に三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンという化学企業3社が統合して、三菱ケミカルホールディングスが誕生しました。タイミングとしては、ダウ・デュポンの合併発表の数日前になります。

三菱ケミカルホールディングスは、不採算事業を見直し、成長事業に投資するというシンプルな方向性を打ち出し、今後は成長事業のフェノール誘導品などの高機能ポリマー、光学フィルム、各種エンプラ、炭素繊維、MMA等の製品を強化していくものとみられています。

インドの農業市場

住友化学は2016年、インド5位の農薬メーカーであるエクセル・クロップ・ケアを買収しました。

インドの農薬市場は、2009年の13億円からわずか5年間で14億円まで成長しており、2019年にはさらに2割増加するとみられています。住友化学は2000年頃からインド市場に参入して北部を中心に展開してきましたが、エクセル社の買収で中部にも拡大する考えです。

三井化学アグロは同じく2016年、インドのPIインダストリーズと合弁で農薬登録会社を設立しました。農薬販売には登録が必要なため登録会社となりましたが、PI社は農薬開発メーカーでもあり、将来的には製品の開発を協力して行なっていく方針とのことです。

セルロースナノファイバー

市場規模1兆円とも言われる「セルロースナノファイバー」が実用化されます。開発したのは、京都の第一工業製薬という会社です。セルロースナノファイバーは植物由来の新素材で、紙の原料となる木材パルプをナノレベルまで細かくしたものです。

鋼鉄の5倍の強度と、鋼鉄の5分の1の軽さを備え、高温に耐え無色透明、体内に入っても安全なことから、自動車や航空機の部材、包装材、建材、化粧品、食品などその用途は多岐にわたると考えられています。経産省は2030年に、セルロースナノファイバーの市場規模が1兆円に成長すると試算しています。

市場動向

化学業界の市場規模は43兆円

日本化学工業会「日本の化学工業2016」によると、化学業界の2014年の出荷額は約43兆円となり、自動車業界の約60兆円に次ぐ第2位となっています。従業員数は約86万人で、食品業界、自動車業界に次ぐ第3位となっています。

また、研究開発費は2.6兆円で、製造業のなかでもトップクラスとなっています。

業界の課題

エチレン生産量の減少

エチレンとは、各種プラスチックや合成ゴムの主要原料で、化学業界の景気を示す指標となります。

2016年、倉敷市の水島工業地帯に旭化成のエチレンプラントが稼働を停止しました。2014年には三菱化学が鹿島で稼働を止め、2015年には千葉で設備を止めました。今回の水島プラント停止はその決定的なもので、エチレン生産は完全に縮小傾向にあります。

稼働の停止は、リーマンショックと東日本大地震による2つの大きなダメージから回復できなかったことが理由となりました。人口の減少がはじまった日本で、エチレン生産量が回復する見込みは残念ながら低いとみられています。

海外化学企業大手との競争激化

日本の化学業界の出荷額は、米国、中国に続き世界第三位の規模にありますが、各企業の業績をみると、日本企業の規模が大きくないことがわかります。

Chemical & Engineering Newsの各社資料によると、2015年度の化学業界の世界ランキングでは、三菱ケミカルが11位、住友化学が18位、三井化学が19位となっています。

近年は、米国や独といった欧米企業だけではなく、中国、サウジアラビア、台湾、韓国のメーカーが力を伸ばし、競争はさらに激しいものになっています。

今後、海外化学企業大手との競争に勝利するためには、海外展開や、異業種間の連携などによる集約化・拡大化が必須となるでしょう。

ジェネリック農薬

国内の農薬業界で議論されているのがジェネリック農薬です。ジェネリックとは後発品のことで、オリジナルの先発品よりも安価に製造できるコピー製品のことになります。そして、特許の切れたオリジナルのレシピ通りに作るので安価に製造できるというメリットがあります。

しかし、日本の制度では、ジェネリック農薬にも先発品と同等の毒性試験や効果試験が課されており、それ相応のコストがかかり、安価に製造できないという問題を抱えています。

業界の今後の将来性

新たな連携を深めること

2016年の化学業界は、原油安や円安を追い風に好況となりましたが、この状況は長くは持たないというのが大方の予想です。

米国や中国には多くのプラント建設計画があり、旭化成の水島プラント停止のような問題は今のところ発生していないものの、エチレンの国内需要や輸出がピークを過ぎたことは誰の目にも明らかです。

しかし、2014年からの連続した企業の統廃合劇が、国内エチレンプラントの稼働率に好影響を与えていることもまた事実です。企業間のみならず、その分野や工程及びコンビナート同士といった連携を深めることで市場拡大の芽も十分に出てきます。

化学業界の停滞は、関連産業や地域雇用に少なくない影響を及ぼします。追い風が吹いている今のうちに次の一手を打てるかどうかに、業界の未来はかかっているのかもしれません。

おすすめの業界研究本

●『日経業界地図 2017年版』日本経済新聞社

日本経済新聞社の記者が徹底取材をして、日本の180業界の最新動向や課題、将来の見通しを解説しています。企業間の相関図、企業・製品のシェア、業界のトレンドを示す表やグラフがビジュアライズされており、業界のことが一目でわかるようになっています。業界研究をするにはまず目を通しておきたい1冊です。

●『会社四季報 2017年 2集春号』東洋経済新報社

国内の全上場企業の業績予想を中心に、所在地から財務情報まで、会社のことを知るのに欠かせない情報をまとめたハンドブックです。就職活動における業界研究から、株式投資といったビジネスユースに至るまで幅広く使えるのが人気の理由です。

●『化学2018年度版』化学産業研究会

産学社「産業と会社研究シリーズ」の「化学編」になります。化学業界の領域はあまりにも広大で、1冊の本にまとめようとすること自体が無謀とも言えますが、それでも要点をうまくまとめており、化学に接点のない人間でも化学業界というものがイメージできるようになっています。業界研究はもちろんのこと、現在の化学事情について知りたい方の入門編としてもおすすめの1冊です。

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