【業界研究】飼料業界の現状・動向・課題について

業界の現状

安全な卵は飼料から

卵を生で食べる習慣があるのは、日本だけと言われています。牛丼チェーン店やすき焼き店などで、卵の生食に躊躇する外国人の方を見たことのある方も多いのではないでしょうか。

海外では、サルモネラ菌の食中毒を防ぐために卵の両面をしっかり焼くことが勧められています。アメリカでは、レストランでの生卵の提供を禁止している地区もあるくらいです。

では、なぜ日本では卵を生で食べることができるのでしょうか。

それは、流通と飼育の方法に手間がかかっているからです。まず、卵がパックされる前に洗浄・殺菌することで、卵の殻の表面の汚れやウイルスを取り除き、流通における衛生問題をクリアします。

そして、問題なのが飼育の方法です。鶏の体内でウイルスが取り込まれてしまったら、簡単に取り除くことができません。ですので、ウイルスが鶏の体内に入らないように厳重に対策を行います。その対策が、「飼料」です。

鶏は配合飼料(*)というものを食べますが、この配合飼料からウイルス等に感染させることは絶対にあってはならないため、安全性をしっかり確認して供給するのです。

これが、安全で美味しい卵を作る方法です。そして、こうした飼料を作っているのが飼料業界になります。

配合飼料:トウモロコシなど2種類以上の原料を配合・加工して、家畜に十分な栄養を供給できるようにした飼料のこと。長期保存ができて、家畜に簡単に与えられるのが特徴となっている。

飼料の種類

家畜等の餌になる飼料は2つに分類することができます。

粗飼料(そしりょう)

草を主とした飼料のこと。栄養価は低いものの、繊維含量が高いという特徴があります。主に、生草、サイレージ(牧草を発酵させたもの)、乾草、わら類等。

濃厚飼料(のうこうしりょう)

穀物を主とした飼料のこと。栄養価が高く、長期保存や輸送に向いています。これを与えることで、粗飼料では不可能な短時間での肥育、産乳・産卵が可能となります。穀類、マメ類、イモ類、ヌカ類、粕類、油脂類、食物性油脂類、酵母類、動物性飼料などがこれにあたります。

飼料業界の構造

飼料業界は、専門の協同組合である日本飼料工業会系と、全農や全酪連・日鶏連などの農協系に大別されています。そして、原料輸入を行う商社を軸に、畜産から販売展開までを各系統に分かれて行っています。

製品原価に占める原料費が約9割と高いのもこの業界の特徴で、近年、飼料メーカー各社はコスト削減のため、需要の多い地域を中心とした生産体制の構築に取り組んでいます。

基本情報

  • 市場規模:5,368億円
  • 労働者数:3,236人
  • 平均年齢:40.6歳
  • 平均勤続年数:15.7年
  • 平均年収:556万円

平均年齢が高く、勤続年数も長いことから、飼料業界は離職率の低い業界と言うことができるでしょう。これは、日本の平均以上の賃金があることも含めて、仕事のやりがいや、働きやすい環境があるということでもありますが、市場規模の小ささは、産業として苦しんでいる印象を想起させるかもしれません。

仕事内容

原料の調達から、飼料の製造・販売までを行うのが飼料業界の仕事の根幹となります。

研究職:新製品や新技術の開発を行います。近年では、水産、畜産、品質、防疫といった部門別に分けて開発をすることが多くなっています。安全・安心な食品を作ることが何よりも求められるので、原料の情報収集や飼料の分析・検査が重要になります。

生産職:工場において飼料の生産を行う仕事です。工場では、飼料の製造、加工、出荷を行います。限られた設備でさまざまな製品を生産しなければならないので、品質を維持しながらスケジュールをしっかり組んで製造にあたります。

営業職:自社飼料を農家や養殖場などに提案することが基本になりますが、それだけではなく、顧客の生産性の向上を念頭に置いて、技術指導や疾病情報の提供をすることも大切な任務となります。

業界シェアランキング上位3位

1位:フィード・ワンホールディングス:2,289億円
2位:中部飼料:1,701億円
3位:伊藤忠飼料:946億円

平均年収ランキング上位3位

1位:昭和産業:686万円
2位:日本甜菜製糖:659万円
3位:協同飼料:573万円

業界の動向

業界再編が加速

農協改革などの農業を取り巻く環境変化に合わせ、飼料業界全体で、大規模な業界再編が行われています。

2014年、飼料業界大手の協同飼料と日本配合飼料が経営統合して、フィード・ワンホールディングスを設立しました。フィード・ワンHDは、両社の畜・水産飼料に関する技術や開発力を最大限に活用することに加え、生産体制の効率化によるコスト低減や、原料調達の増大によるスケールメリットを生かした競争力の強化を図りたい考えです。

2015年、業界最大手の中部飼料は、伊藤忠飼料と日本ハムとの資本業務提携を発表しました。伊藤忠飼料と別会社みらい飼料へ共同出資することで飼料製造分野が強化され、配合飼料の生産面でフィード・ワンHDを超えて、飼料業界トップになりました。

また、日本ハムは配合飼料の大手需要家として配合飼料確保に不安を抱えており、配合飼料を安定して確保したい意図があるものとみられています。

循環型リサイクルの確立なるか

セブン-イレブン・ジャパンは2016年、店舗で販売期限切れとなった食品を飼料にする循環型リサイクルの応用を開始しました。

農林水産省によると、2013年度の食品ロスは632万トンで、その量の多さが問題となっていました。セブン-イレブン・ジャパンが開発したのは、東京都と埼玉県のセブン-イレブン約1300店が排出した食品を配合飼料に加工し、養鶏農場で鶏に与え、そして生産した鶏卵を弁当の材料にするというシステムです。

同社は、これまでも期限切れの弁当や惣菜を回収して、家畜用配合飼料にしてきましたが、今回は養鶏や弁当生産にまで関与し、循環型リサイクルを確立したい考えです。

市場動向

飼料生産量は堅調維持

農林水産省の「流通飼料価格等実態調査」によると、2015年度の配合・混合肥料の生産量は2,354万2,233トンで前年比0.7%の増加となりました。

配合飼料は2,312万4,677トンで同0.6%増となり、配合・混合肥料生産量に占める割合は約98.2%と圧倒的なシェアを誇っています。

さらに、配合飼料の用途をみると

  • 養鶏:43.6%
  • 養豚:24.3%
  • 乳牛:12.8%
  • 肉牛:18.7%
  • その他:0.6%

となっています。

業界の課題

飼料自給率向上計画

2012年度の飼料全体の自給率は26%でしたが、政府は2020年までに38%に増加させる計画を掲げています。飼料別では、粗飼料の自給率が76%、濃厚飼料のそれが12%でしたが、これも2020年までに粗飼料を100%、濃厚飼料を19%にする計画です。

政府がこの自給率向上を推進する理由は、大きく分けて2つあります。

まずは、畜産農家の経営強化です。

自給飼料は、輸入飼料に比べて安価であることと穀物の国際相場等に左右されないことから、畜産経営のコスト低減及び安定化に貢献できます。また、自給飼料を利用することで、飼料による畜産物のブランド化や農家との連携による地域融和を図って、畜産経営強化につなげることが可能となるのです。

次に、農業としての役割強化があります。

飼料自給率の向上を図ることは、水田と同様に多面的機能を発揮して、食料自給率・自給力の向上に貢献し、農業としての役割を強化することにつながります。また、輸入飼料への依存は、国内への窒素持ち込みとその蓄積による環境問題等の原因となるのに対し、飼料作物の栽培は堆肥の有効活用により資源循環に貢献できるという利点もあります。

ただし、政府主導の改革はまだ道半ばの状況であり、飼料業界の動向も含めて引き続き見守っていく必要があります。

業界の今後の将来性

国産飼料が日本の畜産を変える

これまでの飼料業界は輸入飼料に頼ってきました。輸入飼料、とくに輸入穀物は、調達が容易であることから使用する畜産農家も恩恵を受けることができ、日本の畜産の拡大やコスト抑制に大きな貢献をしてきました。

しかし、大量の輸入飼料は、食料自給率を引き下げるとともに、家畜排泄物による環境問題を引き起こす要因ともなっていました。さらには、世界的な穀物需要増加のなかでの価格上昇や、天候などによる価格変動が輸入飼料価格の変動につながり、家畜経営に困難をもたらしてもいます。

近年の農業における環境が変化していることもあり、飼料業界も変わるべきタイミングかもしれません。輸入飼料への依存を減らし、国産飼料への切り替えを図ることは、現段階では簡単ではありませんが、長期的にみれば有用と考えられます。

国内土地資源の有効利用、食料自給力の強化、環境負荷の軽減といった面でもメリットが多く、切り替えを実現させることが飼料業界の未来への第一歩となるのです。

おすすめの業界研究本

『日経業界地図 2017年版』日本経済新聞社

日本経済新聞社の記者が徹底取材をして、日本の180業界の最新動向や課題、将来の見通しを解説しています。企業間の相関図、企業・製品のシェア、業界のトレンドを示す表やグラフがビジュアライズされており、業界のことが一目でわかるようになっています。業界研究をするにはまず目を通しておきたい1冊です。

『会社四季報 2017年 2集春号』東洋経済新報社

国内の全上場企業の業績予想を中心に、所在地から財務情報まで、会社のことを知るのに欠かせない情報をまとめたハンドブックです。就職活動における業界研究から、株式投資といったビジネスユースに至るまで幅広く使えるのが人気の理由です。

『家畜飼育の基礎(農学基礎セミナー)』阿部亮

家畜の生産から活用まで、分かりやすくまとめられています。ただ、家畜の飼育を主題としているので、飼料に関する情報はあまり掲載されていません。業界研究というよりは、飼料業界も含めて動物に関係する職業を希望される方におすすめの1冊です。

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