【業界研究】土木業界の現状・動向・課題について

業界の現状

土木とは何か

土木という言葉は、中国の古典「淮南子(えなんじ)」に登場する「築土構木」という言葉が語源と言われています。築土構木という一節は「土を盛り材木を組む」という意味で、明治時代あたりから使われはじめたようです。

現代では、自然災害防止やインフラ整備*のための公共的な建造物を造る工事のことを指します。代表的な土木工事としては、道路、トンネル、空港、湾岸工事、鉄道、河川、上・下水道などの工事が挙げられます。

*インフラ:インフラストラクチャー(infrastructure)の略で、公共の福祉のための施設のこと。

取引形態

土木業界の工事の大半は、発注者から総合請負会社であるゼネコンなどが元請けで受注し、工事を細分化させて、下請けである専門工事業者が施工し、全体の工事を完成させる形態をとっています。

土木工事業者は専門工事業者として、元請けの監理のもとで1次下請けから2次下請け、そして3次下請けというかたちで施工を担当することが多くなっています。元請けとして工事を受注するには大臣許可を得ている方が有利となりますが、「軽微な工事」のみを請け負って営業する場合には、必ずしも許可を受けなくてもよいとされているため、土木工事業者が大臣許可を得るケースは少ないようです。

基本情報

  • 市場規模:20兆2,000億円
  • 労働者数:17,850人
  • 平均年齢:44.0歳
  • 平均勤続年数:16.4年
  • 平均年収:639万円

建設業界や土木業界は給料が安いなどとよく言われますが、この数字を見る限りではそんなことはなく、平均を大きく上回っています。そして、平均年齢の高さや勤続年数の長さからも、土木業界は定着率が高く、幅広い年齢層の社員が働ける環境であることがわかります。

仕事内容

土木業界での仕事の流れは、まず事前の調査や基本設計・本設計というものがあり、その後必要な申請をして許可を取り着工となります。職種は多くの場合、技術系と事務系に分かれています。

そして、技術系は土木施工、建築施工、設備管理等に、事務系は企画・営業、総務事務等にさらに細分化されます。

当然、技術系と事務系で職務内容は変わりますが、土木業界の場合はどの会社も現場を大切にしており、事務系職種であってもまずは現業事業所に配属されて、現業の仕組みを勉強するところからスタートします。

業界シェアランキング上位3位

1位:NIPPO:4,316億円
2位:前田道路:2,301億円
3位:日本道路:1,574億円

平均年収ランキング上位3位

1位:ショーボンドホールディングス:1,019万円
2位:NIPPO:895万円
3位:日本道路:785万円

業界の動向

コスト抑制技術

道路や橋梁などの改修工事で新しい技術が実用化されています。近年における技術革新の特徴はコストを抑えることができるという点で共通しています。

大成建設は橋梁やトンネルなどのコンクリートのひびを、従来の半分のコストで見つける技術を開発しました。これまでは目視でひびを発見してきましたが、この従来通りの方法だと維持監理・更新費用が2020年までに5兆5,000億円にまで膨らむとの予測もあり、インフラの維持・更新コストに頭を悩ませてきた自治体にとっては朗報となっています。

新技術を使った改修工事の需要は、今後さらに伸びると考えられています。

京国際空港C滑走路の施工不良問題

国土交通省が発注した「東京国際空港C滑走路他地盤改良工事」において、液状化を防ぐための施工を実施した東亜建設工業の施工不良が2016年に発覚しました。

また、同社より、発注者である同局に対してデータを改ざんした上で、契約図書通りに施工が行われていたとの虚偽の報告がなされていたことも明らかになっています。土木業界の抱えている構造的課題に対して、官公庁や民間から一層厳しい目が向けられています。

防災工事が増加

2014年に広島市で大規模土砂災害が発生したことを機に、土砂災害を防ぐための防災工事数が増えています。

土砂災害を防ぐ斜面の防災工事といえば、これまではコンクリートで全面を覆う方式が主流でしたが、最近では鋼製のワイヤーや柵を使って崩壊を防ぐ工事方式が多くなっています。鋼製のワイヤーや柵を使った方式は、コンクリートに比べて施工期間が短い上、樹木を伐採せずに景観や環境を維持できる点がメリットとして挙げられます。

市場動向

土木業界市場は減少傾向で推移

建設経済研究所「建設経済モデルによる建設投資の見通し」によると、2016年の土木投資額は前年比3.9%減の20兆2,000億円となる見通しです。土木業界市場が減少傾向で推移しているのは、公共事業が低調であることや人件費が高騰していることが大きな要因とされており、土木業界としては厳しい経営環境となっています。

さらには、縮小する市場において同業者間の競争が激化ししていることもあって、受注環境にも明るい兆しはみられていません。

倒産件数は減少

帝国データバンクの「全国企業倒産集計」によると、2015年度の建設業の倒産件数は1,630件(前年度比9.4%減)となりました。とくに、土木工事、木造建築工事、内装工事、電気配線工事などで減少しています。この改善の背景には、各種金融支援策の効果があったものと考えられています。

業界の課題

受注単価の下落続く

土木業者の多くは下請け業者であり、元請けである建設業者や大手土木工事業者の受注状況の影響を受けることが多くなっています。

建設投資の動向は、景気の動向や政府の施策で大きく左右されます。日本の財政状況の逼迫から建設投資は冷え込み、公共事業費は年々削減されています。

一方、一時期の汚職問題や官製談合の頻発で、一般競争入札制度の導入が地方にも及んでおり、ゼネコンや大手土木工事業者のコストダウン要求は一段と激しさを増し、受注量の減少と受注単価の下落に歯止めがかかっていません。

慢性的人手不足

土木業界では、3K(危険、汚い、きつい)とも言われる労働環境の改善が出来ておらず、慢性的な人手不足に陥っています。

建設会社大手の大林組は、2014年から鉄筋工や型枠工などの職業訓練校を開校し、人手不足を解消するために自ら技能者を育成する体制への移行をはじめました。この職業訓練校では、同社の協力会社約900社に勤めている2〜5年目の技能者を受け入れています。技能者の多くは専門工事会社に勤めており、従来は各企業のなかで研修を行うものでしたが、大手ゼネコンが直接技術者を育成するという珍しい事例となっています。

さらには、外国人技能者の育成を行なっている土木工事会社もあり、土木業界自体での改革もはじまっている模様です。

女性作業員のための環境整備

国土交通省や日本建設業連合会などは、2018年までに女性技術者や技能者などの女性作業員を現在の2倍の18万人にする目標を掲げています。

しかし、工事現場にはトイレや更衣室が少なかったり、女性用の備品がなかったりするので、人手不足解消のためにも、官民あげて女性が働きやすい環境の整備を行なっていく必要があります。

業界の今後の将来性

土木工事需要はまだまだ伸びる可能性あり

土木業界全体の工事量の減少、工事単価の低下、現場における労働環境の改善、機械化、生産性向上といった問題が依然として解決していないのが現状です。

まずは、優良な専門工事業者を積極的に採用することで、工事自体の質と生産性を上げ、他社との差別化を図ることが重要となります。もちろん、単独では引き受けられる仕事量にも限界があるので、業種を超えた異業種との合従連衡も視野に入れて取り組む必要があるでしょう。

次に、人材育成です。大林組のような技能者を育成する体制を土木業界全体で構築し、複合的な監理能力を持った技能者を育成しておくことが大切です。

さらに、公共事業において、政治家との癒着、汚職とならないよう、クリーンな経営を行うことが大前提になります。

公共工事削減などによる受注数の低迷は当分続くとみられています。ただ、原油安、円安にともない企業収益は改善傾向にあり、2020年の東京オリンピックという追い風も吹いています。そして、2033年までに建設後50年以上経過する施設の割合が高くなることも見込まれています。

土木業界内での競争はさらに激しくなるかもしれませんが、長期にわたって潜在的に土木工事需要が存在していることは確かなようです。

おすすめの業界研究本

『日経業界地図 2017年版』日本経済新聞社

日本経済新聞社の記者が徹底取材をして、日本の180業界の最新動向や課題、将来の見通しを解説しています。企業間の相関図、企業・製品のシェア、業界のトレンドを示す表やグラフがビジュアライズされており、業界のことが一目でわかるようになっています。業界研究をするにはまず目を通しておきたい1冊です。

『会社四季報 2017年 2集春号』東洋経済新報社

国内の全上場企業の業績予想を中心に、所在地から財務情報まで、会社のことを知るのに欠かせない情報をまとめたハンドブックです。就職活動における業界研究から、株式投資といったビジネスユースに至るまで幅広く使えるのが人気の理由です。

『土木技術の基本と仕組み(How‐nual Visual Guide Book)』五十畑弘

かなり複雑になっている現代の土木について、豊富な図説を交えながらわかりやすく解説してあります。工学を中心とした土木技術についての話題が多くなっていますが、土木業界や職業、資格についてもしっかりとした説明がありますので、業界研究には最適な1冊となっています。

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