【業界研究】食品業界の現状・動向・課題について

食品業界の現状

食品業界の中では、生鮮食品と加工食品に大きく二分することができます。生鮮食品は野菜や果物、魚介、食肉など、その名の通り鮮度のあるもの食べ物で、そのまま生で食べたり、調理をして食べる食品を指します。

もうひとつの加工食品は、廃棄をして無駄にしないため・品質向上のため、安定供給のためなどを目的として、長期保存を可能にした食品のことを指します。具体的には味噌や漬物などの発酵食品や、お惣菜、缶詰、その他お菓子や冷凍食品などを加工食品としています。また、パンや麺、マヨネーズなどの元の素材とは違う形で加工されたものも、この加工食品に分類されます。

スーパーに行けば一目瞭然、生鮮食品というのは肉、魚、野菜だけで、ほとんどの食品は加工食品が陳列されています。よって、食品業界の大半のメーカーは加工食品を作って、それを販売しています。この加工食品を消費者に買ってもらおうと、メーカー各社はしのぎを削っているのです。

食品業界は人が生きていくために欠かせない商品を扱っていることから、電気・ガス・水道などのインフラや、鉄や車などと同じ、国の基幹産業と言えます。この食品業界は、消費を伸ばすも縮めるも、人口の増減が密接に関連しています。少子高齢化に伴う人口減少の傾向にある日本の市場は、今後厳しい市場になっていくことが予想されています。

しかし、直近の売上推移を見ると、毎年微増を続けており、堅調な推移を見せています。これは、円安によって原材料が高騰している分を、食品の値上げに転嫁していることが理由です。実質的に市場が拡大しているわけではなく、単純な値上げによって微増しているだけです。

根本的な市場拡大をするべく、食品業界の各社は海外にその市場を求めたり、昨今流行っているオーガニック食品や機能性食品などの新たな分野を開拓して、存在価値を高めるべく努力をしています。

現状1:基本情報

食品業界の市場規模は18兆388億円で、全体の業界の中でも規模の大きい業界と言えます。食品業界で働く労働者の数は101,665人で、かなり多くの労働者が食品業界に従事していることが分かります。

この業界で働く労働者の平均年齢は40.3歳で、平均勤続年数は14.6年になります。昔ながらの産業ということもあり、安定した仕事で、安心して働けることを理由に、長い期間働く労働者が多い傾向があります。

平均年収は569万円で、あまり多くの給料をもらえる業界ではありません。
食品業界は就活生にいつの時代も人気の就職先となっています。特に、商品企画や研究開発などの職種は毎年かなり多くの応募があり、混戦模様を呈する状況となります。他には、営業職、製造現場の仕事など、どの業界のメーカーにもある職種があります。

現状2:業界シェアランキング上位3位

1位:明治ホールディングス(売上高:1兆1,480億円 シェア率:6.4%)
2位:日本ハム(売上高:1兆1,220億円 シェア率:6.2%)
3位:味の素(売上高:9,913億円 シェア率:5.5%)

食品業界のシェアランキングの特色は、どこかの会社が飛び抜けてシェアを確立しているということがなく、各社が均等と言えるほどのシェアを少しずつ獲得していることです。

3位以下のランキングは、
4位:山崎製パン(売上高:9,682億円)
5位:マルハニチロホールディングス(8,517億円)
6位:日本水産(6,042億円)
です。

ランキングが6位まできて、ようやく1位の差が倍になる業界なので、各社が小さいシェアを等分のような形で獲得している状況がよく分かります。

現状3:平均年収ランキング上位3位

1位:明治ホールディングス(971万円)
2位:味の素(909万円)
3位:日本たばこ産業(894万円)

食品業界の平均年収ランキングは、シェアランキングにランクインする企業が名を連ねています。業界全体の平均年収は569万円と決して高いとは言えないですが、業界のトップ企業は1000万円近い給料がもらえる企業もあり、高い水準の給料をもらえることが分かります。

食品業界はかなり幅が広く、一種類の商品を手がける中小企業も多いため、全体の平均年収で見るとそれほど多くないですが、就活生に人気なブランド力のある有名企業は年収が高い企業になっています。

業界の動向

動向1:市場動向

日本の食品業界は、戦後の物資が不足していた時代から急激に規模を拡大し、それに伴って日本の生活の向上に多大な貢献をしてきました。食べるものに困っていた戦後の日本人の生活を少しでも豊かにするべく、戦後の資源の限られた厳しい状況の中でも国民のお腹を満たすべく、試行錯誤をしながら発展をしてきました。

食料の需給が国策のひとつとしてあげられた影響もあって、戦後から約5年の期間で生産量は大幅に回復し、食糧難から逃れることができるようにまで拡大しました。その後の高度経済成長の追い風を受けて、さらに人口ボーナスの手伝いもあって、戦後ゼロの状態から始まった食品業界は、海外に大量に加工食品を輸出するほどにまで成長しました。

食品業界の発展に寄与したのが、電子レンジや冷蔵庫、炊飯器などの家電製品の普及です。これらの家電製品によって、食品の鮮度を保ちながら保存したり、調理が簡単にできるようになり、家電製品の普及と同時に食品業界は急激に拡大していきました。

昨今の海外のニュースでは、食品業界の市場は2020年に世界全体で3兆ドルの市場規模になるという試算が発表されています。日本国内の直近の市況は、原材料価格が高騰したことによる影響を受けはしたが、その分の商品価格の値上げ対応で得られた効果によって増収増益を各社が享受しています。

この海外マーケットの爆発的な成長見込みが現実となるようであれば、他の業界でも類を見ない期待の大きく持てる産業になります。この試算は現実離れした根拠のない数字ではなく、発展してきている途上国が人口の多い国であることから、現実味の帯びた実現性の高い数字であると見られています。

人口減少による市場規模の縮小、原材料の高騰など業界の抱える問題点は多くありますが、視野を日本だけでなく世界に向けると、成長著しい大きな市場が広がっています。キッコーマンを筆頭に日本企業は海外に需要を求めて進出していますが、世界的な日本食ブームを味方に更なる市場開拓をすることで今後も拡大の期待が持てる市場と言えます。

動向2:業界の課題

食品業界が抱える課題には国内市場の縮小化、原材料のコスト高騰、食品の安全管理への対応、業界再編などが挙げられます。

国内市場の縮小化は、少子高齢化に伴う購買力の低下、不景気による消費の減退などを要因として、避けられない命題となっています。直近の国内市場は売上が微増している堅調な業界に見えますが、実質的な部分では疑問を持たざるを得ない状況です。

しかし、国内市場は衰退の運命を避けられないというわけではなく、オーガニック食品など、食品の安全・安心を訴える種類の市場は年々拡大してきています。このように時代と共に移ろう消費者ニーズをしっかりと掴み、それに合った商品を投下することで市場の拡大は今後も期待できる分野と言えます。

昨今の食料品のコスト増加は、原材料の高騰と、食品に対する安全・環境対策のコスト上昇が原因となっています。原材料の高騰の背景には、原油や小麦の価格が上がることによって、原材料のコストが連動するように上がっています。これはどうしても外的要因になるため、メーカーとして努力の限界があり、解決するには難しい問題として残り続けます。

一方の安全・環境対策に関するコストは、日本の食品が世界的に見ても過剰とも言えるほどの安全基準を設けているため、そのレベルまで品質を向上させるためのコストが掛かり、これで苦しんでいると言えます。この安全基準の高さは逆に日本ブランドの安心感につながっているため、一長一短がありますが、それが首を締めているという現状もあります。

先進国ならではの問題も抱えており、日本では飲食店やコンビニの食品を毎日とんでもない量を廃棄しています。世界にはご飯が食べられないことが原因で、毎日4万人もの人達が餓死しています。国が違うだけでこんなにも食事情が異なるというのは、先進国としてのノーブレス・オブリージュ(富める者の責任)の精神をもう少し持ち、廃棄の問題を減らす工夫をしなければいけないでしょう。

動向3:業界の今後の将来性

日本のマーケットはどうしても抑えることのできない人口減少による消費の減退があるため、それにつられて消費が減っていくことは一目瞭然です。全体の人口が増加していかない限り、食品業界の国内市場の縮小は避けられないでしょう。

しかし、日本には世界でも群の抜いた食品の安全性基準があります。この日本の基準は圧倒的な高さを誇るもので、外国では考えられない数値を基準として定めています。

そんな圧倒的な基準を設けて運用している食品の安全・安心管理において、国内市場における業績拡大の可能性として考えられているのが、オーガニック食品と、機能性食品です。

オーガニック食品は、食の安全・安心に関する意識の高まりによって、その市場は年々拡大してきています。ある機関の発表では、グローバル規模で見ると10%以上の成長も見込める市場ということで、世界のメーカーがシェアを獲得すべく奮闘しています。

このオーガニック食品に関しては、日本のメーカーが昔から取り組んできた歴史があるので、グローバル市場でも十分戦っていける素地が整っている分野と言えます。

また、機能性食品の開発も日本は進んでおり、グローバルで戦える可能性を十分秘めている分野になっています。高齢化社会になり、介護職の需要は年々高まっています。咀嚼力が弱くなった高齢者の食事は舌でつぶせるほど柔らかくしたり、飲み込みやすくする工夫を施すことが絶対条件としてあります。

このようなノウハウを日本メーカーは持っているため、海外の高齢者向けとして海外シェアを獲得していくことも十分考えられます。

特に最近は日本食ブームが世界的に起こっており、各食品メーカーが海外進出に躍起になっています。各社がこぞって海外展開を狙っているため、激化は避けられません。しかし、減少を続ける国内市場を頼りにするわけにもいかないので、海外事業を成功させるかどうかが明暗を分けると予想されています。

おすすめの業界研究本

  • 食品業界のしくみ
  • 食品〈2018年度版〉 (産業と会社研究シリーズ)
  • 図解入門業界研究最新食品業界の動向とカラクリがよ~くわかる本[第3版]
  • ビジュアル図解 食品工場のしくみ