【業界研究】菓子業界の現状・動向・課題について

業界の現状

菓子から見える日本

菓子ほど日本らしさが表れた産業はありません。商品は安くて小さいですが、高い将来性と大きな可能性を秘めています。国内限定のガラパゴス製品のように見えて、世界のどこにでも輸出できるグローバル製品であったりもします。

そして、その美味しさは、大人から子供までたくさんの人々に笑顔をもたらします。人を幸せにする菓子は、平和な日本を象徴する食べ物と言ってもいいかもしれません。そんな菓子を作っているのが、菓子業界です。

生産量は増加

全日本菓子協会によると、2015年の菓子の生産数量は前年比1.7%増の196万4,981トン、生産金額は同2.2%増の2兆4,524億円でした。訪日外国人によるインバウンド需要の増加などで、生産数量、生産金額ともに増加しましたが、残念なことに、数値的にはリーマンショック以前の水準には戻っていません。

そして、スーパーやコンビニ各社がプライベートブランド菓子の取り扱いを増やしていることもあり、店頭の限られた棚を巡ってメーカーの競争は激しくなっています。

さらには、小麦や乳製品、資材などの原材料価格が上昇するなか、小売業からの値下げ要求は依然として強く、菓子業界の経営環境はいっそう厳しいものとなっています。

基本情報

  • 市場規模:3兆3,339億円
  • 労働者数:13,672人
  • 平均年齢:40.6歳
  • 平均勤続年数:14.9年
  • 平均年収:559万円

市場規模の3兆3,339億円という額は十分に大きい数字と言えるでしょう。ここ10年間の市場規模をみても、多少の増減こそあれ、比較的堅調に推移しており、業界として安定していることがわかります。菓子業界全体で昔からのヒット商品を多数抱えていることが、この安定につながっているのかもしれません。

年収は、十分に高い数字であり、さらに大手ともなるとさらに数字が大きくなりますが、業界全体として給与が上がりにくいという傾向があるようです。

仕事内容

菓子業界の仕事は、主に「営業」「マーケティング」「企画開発」に分けられています。

営業

商品をより多くのお客さまへ届けるために、スーパーやコンビニといった小売店や卸店に、商品の魅力や効果的な販促方法を提案していく仕事です。

マーケティング

ヒット商品を生み出すために、購買層の調査や分析を実施する仕事です。各種プロモーションの企画から、営業支援、新商品企画とその領域は多岐にわたります。

企画開発

新規素材の開発研究を行ったり、新商品の企画開発を行う仕事です。営業やマーケティングからの要望を具体的なカタチにします。

業界シェアランキング上位3位

1位:江崎グリコ:3,153億円
2位:カルビー:1,999億円
3位:明治ホールディングス:1,690億円

平均年収ランキング上位3位

1位:明治ホールディングス:971万円
2位:江崎グリコ:781万円
3位:B-R サーティワン アイスクリーム:763万円

業界の動向

大人向け商品

少子高齢化が進み、近年の菓子消費のボリュームゾーンは高齢者に移っています。そこで、菓子業界各社は高齢者等をターゲットにした「大人向け商品」に力を入れるようになりました。

明治ホールディングスは2013年に「大人のたけのこの里」と「大人のきのこの山」を発売しました。外装をシックな色合いにして高級感を演出し、チョコレートの甘さを控えめにするなど大人の好みに合わせることで、「大人向け商品」ブームの火付け役になりました。

山崎製パンは、コンビニを利用するシニア層の増加にともない、コンビニ店頭での串団子や大福、まんじゅうなどの販売を強化しました。山崎製パンの和菓子の売上高は堅調に推移しています。

ロッテは2015年に発売した「乳酸菌ショコラ」が人気です。乳酸菌ショコラは、熱に強く死ににくいという植物性の乳酸菌が入ってるチョコレートで、健康志向の消費者を取り込んで、競合商品との差別化に成功しています。

菓子のパッケージ・サービス

菓子のパッケージを自分好みのイラストや写真にすることができるサービスが広がっています。

森永製菓は、2016年から、スマートフォンの無料アプリを使って、オリジナルのハイチュウなどを作れる「おかしプリント」をはじめました。不二家も2016年から同社の商品「ミルキー」誕生65周年を記念して、写真と名前が入れられるスマホサービス「スマイルミルキー」を開始しました。

サービスが広がる背景には、ギフトなどに個性を求める人が増えたことが挙げられます。

大手による直営店

カルビーが2011年に出店した直営店「カルビープラス」が好調なことを受けて、菓子業界の大手は直営店を出店しています。

ネスレ日本は直営の専門店「キットカットショコラトリー」を全国で展開しています。直営店を出店するのは自社商品の認知度を高めるためですが、普段消費者との接点がないメーカーにとっては、消費者の生の声を収集できる貴重な場でもあるので、消費者の声をフィードバックして商品開発に生かすことができれば、新しいタイプの商品も生まれやすくなるのではと期待されています。

市場動向

菓子業界の市場規模は3兆3,339億円

全日本菓子協会によると、2015年の小売金額をベースとした国内菓子市場は前年比2.5%増の3兆3,339億円でした。

アベノミクス効果の浸透によって国内景気の回復が進んだこと、夏の気温が比較的低温で推移したこと、訪日外国人の増加がインバウンド需要につながったことの3点が堅調に推移したことの要因とされています。

国内市場に占める品目別シェアでは、
1位:チョコレート(構成比15.1%、前年比3.7%増)
2位:和生菓子(構成比14.2%、前年比1.1%増)
3位:スナック菓子(構成比12.9%、前年比1.7%増)
4位:洋生菓子(構成比12.5%、前年比1.2%減)
5位:ビスケット(構成比11.1%、前年比7.5%増)
となっています。

業界の課題

海外市場をどこまで開拓できるか

これまでは、菓子業界の海外進出と言えば大手が中心でしたが、最近は中堅メーカーの進出も多くなっています。

山芳製菓は2015年以降、主力製品のポテトチップス「わさビーフ」を米国や欧州、台湾で発売しました。わさビーフの売上は年間10億円程度と毎年2ケタの勢いで伸びていますが、売上はそろそろ頭打ちになるとみられています。

海外市場の場合、一度受け入れられれば安定した売上が見込めると言われていますが、さらなる底上げができるかどうかが大きな課題となっています。

細分化するニーズ

訪日外国人によるインバウンド需要が増加していることに間違いはありませんが、訪日外国人といっても、国や宗教等によってニーズは異なります。

たとえば、北海道を訪れる訪日外国人には「北海道」を意識させる商品が受けています。また、イスラム世界から来た観光客に商品を勧めるのであればイスラム教に則った基準をクリアする必要があります。そして、とうぜんですが、この問題は国内だけではなく海外進出にも大きく関係します。

菓子業界の話ではありませんが、香港では即席麺市場の約6割を日清食品の「出前一丁」が占めているとのことです。香港のスーパーの棚には出前一丁が所狭しと並び、麻油味・黒蒜油豬骨湯味・辛辣XO醤海鮮味など、日本では発売されていない味が販売されています。

つまり、マーケティングが大切になります。出前一丁が国や地域の食文化に合わせて味を開発したように、菓子業界もニーズに合わせて対応できるようにならなければいけません。

業界の今後の将来性

日本らしさを生かした商品を

菓子は年間500品もの新商品が発売されていますが、ヒットして定番となるのはごくわずかです。

定番商品を作るためにも、これまで以上にマーケティングおよび商品開発に取り組まなければいけません。そして、インターネットやSNSを活用して商品販促を行なっていくことも大切です。

長く続く経済不況や消費税率の引き上げにより、消費者は価格に対して敏感になっています。菓子という商品は、生きるために必要な商品ではないということもあるかもしれません。

しかし、少し高くても菓子を購入する消費者が一定数以上いることは確かです。高付加価値商品の売上が好調に推移していることがそれの証明でもあります。

鍵となるのは、高い技術と生産力、面白いネーミング、精巧なパッケージ、そしてバリエーションと日本企業の強みを生かすことです。そして、国内および海外の市場ニーズに日本らしさを持って取り組むことができれば、日本の菓子は自ずと世界に拡散されていくはずです。

おすすめの業界研究本

『日経業界地図 2017年版』日本経済新聞社

日本経済新聞社の記者が徹底取材をして、日本の180業界の最新動向や課題、将来の見通しを解説しています。企業間の相関図、企業・製品のシェア、業界のトレンドを示す表やグラフがビジュアライズされており、業界のことが一目でわかるようになっています。業界研究をするにはまず目を通しておきたい1冊です。

『会社四季報 2017年 2集春号』東洋経済新報社

国内の全上場企業の業績予想を中心に、所在地から財務情報まで、会社のことを知るのに欠かせない情報をまとめたハンドブックです。就職活動における業界研究から、株式投資といったビジネスユースに至るまで幅広く使えるのが人気の理由です。

『「わさビーフ」したたかに笑う。業界3位以下の会社のための商品戦略』濵畠太

山芳製菓の商品開発を例に、どうやってブランド戦略を行うかという切り口で菓子業界の仕事を取り上げています。ゆるめの文章で書かれているのですらすらと読めますし、ものづくりについての記述も多いので、業界研究をしたい学生の方から企画・開発部門のビジネスマンまで、読んでおいて損はない1冊となっています。