【業界研究】葬儀業界の現状・動向・課題について

業界の現状

究極のサービス業

高齢化社会を迎え、その将来性を取り沙汰されることも多い葬儀業界ですが、葬儀業界の仕事はどれも大変な仕事になります。

まず、「曜日」や「時間」という概念はありません。人が亡くなることに曜日や時間は関係ないからです。休日であれ、夜中であれ、人が亡くなった瞬間に、その仕事がはじまります。

そして、悲しみに暮れる遺族を支えながら、数日間で葬儀という厳粛な儀式をすべて執り行わなければなりません。家族を亡くしてうちひしがれる遺族に配慮しながらも、葬儀は着実に遂行させていく必要があり、それゆえ、葬儀業界の仕事は究極のサービス業と言われるのです。

さて、葬儀には、主に3つの役割があります。

1つ目は、亡くなった故人の魂を、あの世に送り届けるという宗教的な役割。
2つ目は、遺された家族と友人知人が、故人とお別れをするという社会的な役割。
そして、3つ目は、遺族が、一連の儀式を通して悲しみを癒していくという精神的な役割です。

このどれか1つが欠けてもいけません。それだけ葬儀というのは特別な儀式であり、大変な仕事なのです。

葬儀社に関連するさまざまな仕事

葬儀社はサービス業ではありますが、すべてを自社で行うわけではありません。

湯灌師(ゆかんし:遺体を洗浄する作業を専門とします)、納棺師(のうかんし:遺体の納棺作業を専門とします)、生花祭壇スタッフ、葬儀の司会者など遺族の要望に応じて葬儀社がコーディネートすることになります。その他、通夜や葬儀後の会食で料理を出す仕出し店や、香典返しを用意するギフト会社なども同様です。

また、関連する業界としては、仏壇仏具、暮石、墓地といった分野もあります。

大手の葬儀屋になればなるほど、これらの作業を自社で行う比率が高くなりますが、たいていの場合は関連する会社同士で連携をとって作業を進めます。

基本情報

  • 市場規模:1兆7,600億円
  • 労働者数:23,993人
  • 平均年齢:42.3歳
  • 平均勤続年数:8.7年
  • 平均年収:579万円

市場規模は1兆7,600億円という数字になっています。この数字を大きいと見るか小さいと見るかは判断の分かれるところですが、消費者が、終末というある種のイベントに特別な意味を見出して、ある程度の金額を払っているということだけは間違いないようです。

平均年収の579万円という金額は平均よりも多い数字ではありますが、葬儀業界という仕事の大変さを考えると少し物足りない額かもしれません。

仕事内容

葬儀業界の仕事とは、端的に言えば、葬儀を企画・準備をして実行することになりますが、実際の業務は多岐にわたります。そして、遺族の心情に配慮しながら業務を遂行し、予想外のことが起きても柔軟に対応する適応力も求められます。

窓口

たいていの場合、電話で依頼されます。家族を亡くして動揺している施主にアドバイスを与えながらも、必要なことを聞き出し、つぎの対応の指示をします。基本的に24時間対応です。

打ち合わせ

どんな葬儀を行うのかを、施主の希望を聞きながら決めていきます。葬儀というものは同じように見えて一つとして同じものはなく、予算を考えながら具体的なかたちを提示していきます。

手配

葬儀にはさまざまな人および会社が関わります。そういった協力者を手配し、取り仕切っていきます。

納棺

通夜が始まるまで棺に納めます。地域によっては専門の納棺師が行う場合もありますが、近年は葬儀社が行うことが多くなっています。

設営

葬儀会場の設営を行います。自社のホールで葬儀を行う場合は比較的簡単に済みますが、貸しホールや寺院、自宅の場合は、必要な道具を持ち込んでゼロから設営をしなければなりません。

葬式当日

当日はいくつかの担当にわかれます。葬式の進行係、会場案内、受付、飲食の接待など、すべて葬儀社スタッフで行います。

営業

葬儀の依頼を増やすための広告や企画を考えます。チラシ、交通広告、看板が中心になりますが、最近ではインターネット広告も増えています。

葬祭ディレクター

葬儀社のスタッフにかかわる資格として、「葬祭ディレクター」と呼ばれるものがあります。絶対に必要な資格ではありませんが、会社によっては資格手当がつくこともあります。

「葬祭業に従事する人びとの、知識・技術の向上を図り、併せて社会的地位向上を図ること」を目的として作られ、1級と2級にわかれています。2級は「葬祭サービスの一般的な知識と技能」、1級は「葬祭サービスの詳細な知識と技能」が審査されます。

2級を受験できるのは、葬祭実務経験が2年以上あることが条件になり、1級は5年以上になります。2013年の時点で、葬儀業界従業者の約30%がこの資格を取得しているとのことです。

業界シェアランキング上位3位

1位:燦ホールディングス:180億円
2位:ティア:89億円
3位:東京博善:86億円

平均年収ランキング上位3位

1位:燦ホールディングス:842万円
2位:平安レイサービス:637万円
3位:東京博善:588万円

業界の動向

小規模化する葬儀

近年において、葬儀は小規模化しています。以前は参列者が100人を超えるものが当たり前でしたがが、ここ数年は50人以下が主流となっています。

葬儀が小規模化している原因としては、

  1. 家族・親族と若干名の友人知人のみで葬儀をあげるという家族葬を選択する人が増えていること
  2. 高齢になると、すでに亡くなっている友人知人も多くなって、交友関係が狭くなること
  3. 葬儀そのものを行わず、病院から直接火葬場に行く直葬が増えていること

の3つが挙げられます。

個性化する葬儀

最近の葬儀の傾向として多いのが、映像や音楽を用いた演出です。

個人が好きだった音楽を流しながら、故人の写真で構成されたスライドを上映したり、故人の写真・思い出の品などを展示したコーナーなどを設えることも多く、こうした演出は以前の葬儀にはみられなかったことです。

そして、個性化は、お墓の分野でも進んでいます。

以前は、縦に長い長方形型の和型墓石が一般的でしたが、今では、横型の洋型墓石も増えています。また、墓石自体をピアノの形や将棋の駒の形にしたり、「〇〇家」という文字だけではなく、「ありがとう」などといったメッセージ性のある言葉を刻むケースも少なくありません。

さらには、墓石を建立せずに木を植えて墓碑がわりにする樹木葬や、遺骨を墓地に埋葬せずに海や山に骨をまく散骨も増えています。

終活ムーブメント

「終活」という言葉があります。

これは、葬儀業界ではよく使われているものなのですが、人生の終わりのための活動、つまり葬儀、終末期医療、相続などについて、元気なときに考えておこうという活動です。

葬儀業界大手の燦ホールディングスでは、葬儀担当者が遺族を訪問し、四十九日の準備や死去にともない発生するさまざまな手続きのアドバイスを行なっています。

小規模な葬儀の広がりや葬儀業界の競争激化もあり、葬儀に関連した付帯サービスを強化することで、収益の維持および拡大を図りたいという狙いです。

ニーズに合わせた葬儀の提供

インターネット上で葬祭プラン「小さなお葬式」を販売しているユニクエスト・オンラインは、費用を明確にした葬儀サービスを展開しています。

永代供養というサービスを追加料金なしで明記しているほか、最長2年は合葬としないことで利用者のリスクを軽減しています。

それ以外にも、海洋散骨代行サービスの散骨する海域を14ヶ所に増やすなど、利用者の立場で考えたサービスを提供し、事業拡大につなげています。

市場動向

市場規模は横ばいながらも、総体的には拡大

矢野経済研究所の調査によると、葬儀業界の2014年度の市場規模は1.76兆円となっています。各項目別にみると、売上高は6,064億円で前年比1.6%増、取扱件数は約4198億件で同0.7%減、事業所数は2,205ヶ所で同2.8%増、従業者数は約23,993人で同1.0%増となっています。

葬儀の件数自体が若干の減少傾向にありますが、各社のサービスの強化が全体的な売上の増加につながったものと考えられます。

業界の課題

葬儀費用の低下が続く

日本消費者協会によると、2015年の日本の葬儀費用の平均額は188万9,000円で、2003年のピーク時に比べて2割減少しています。

前述の通り、葬儀が小規模になっていることがその直接的な原因となりますが、葬儀の料金についての相談が国民生活センターにたくさん届いていることを考慮に入れれば、葬儀サービスというものに対して消費者の目がより厳しくなっていると考えることもできます。

今後は、サービスや料金をさらに明確化して、消費者に提供していかなければなりません。

繁忙期以外の時期の有効活用

人が亡くなってはじめてビジネスがスタートするという葬儀業界の性質上、繁忙期を計算することは不可能です。

現在では、週6日出勤で、休日はローテーションを組んで交代で取るというシステムを採用している会社が多くみられます。葬儀がある場合なら、このシステムでも問題はありませんが、葬儀のないときに人材をどうするのか、人材リソース等を有効活用できる新サービスの開発もふくめて、葬儀業界全体で取り組む段階に来ています。

業界の今後の将来性

市場縮小の可能性は低い

葬儀業界の仕事は、斎場を用意したりする必要がないこともあって参入障壁が低いことでも知られています。今後は、葬儀業界全体の価格競争はさらに続いていくものとみられ、地方の中小葬儀社の廃業も目立つようになりました。

これからの葬儀業界には、価格だけではなく、周辺サービスもふくめて、利用者に訴求できるようなサービスの考案・提供が求められていますが、有史以来、人が亡くなったときには、多くの民族によって弔いという行為が行なわれてきたことは周知の事実です。葬儀は言わば、人類共通の習慣であり、文化的、社会的な意味において必須であることに変わりはありません。

高齢化社会ということもあり、当分はこの現状が横ばい状態で続くものと考えられます。さらなる市場の拡大を目指すのであれば、葬儀というサービスの意味合い自体を変えて行くような抜本的な改革も必要となるでしょう。

おすすめの業界研究本

『日経業界地図 2017年版』日本経済新聞社

日本経済新聞社の記者が徹底取材をして、日本の180業界の最新動向や課題、将来の見通しを解説しています。企業間の相関図、企業・製品のシェア、業界のトレンドを示す表やグラフがビジュアライズされており、業界のことが一目でわかるようになっています。業界研究をするにはまず目を通しておきたい1冊です。

『会社四季報 2017年 2集春号』東洋経済新報社

国内の全上場企業の業績予想を中心に、所在地から財務情報まで、会社のことを知るのに欠かせない情報をまとめたハンドブックです。就職活動における業界研究から、株式投資といったビジネスユースに至るまで幅広く使えるのが人気の理由です。

『葬儀業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本』吉川美津子

発行が2010年と少し古いのですが、葬儀業界や宗教について丁寧に解説してあります。一般人が葬儀業界と関わる機会は多いとは言えないので(関わったとしても、葬儀の前後だけでしょう)、その裏事情を知りたい方や業界研究をしたい方に最適な1冊となっています。

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