【業界研究】旅行業界の現状・動向・課題について

業界の現状

格安航空券の仕組み

格安航空券は、HISの前身の会社が学生を相手に団体用チケットをバラ売りしたのが始まりとされています。空席を埋めたいと考える航空会社と、余った席でいいから安く飛行機に乗りたいと考える旅行者の思惑が一致することで格安航空券というものが生まれます。

かつては、その空席と旅行者をマッチングさせることが難しかったのですが、大量に仕入れた格安航空券をHISが持ち前の販売力で上手くさばいたことにより、ビジネスとして成り立つようになりました。この格安航空券が一般旅行者に受け入れられて大ヒットし、HISは現在の旅行業界で地位を築いたと言われています。

さて、その旅行業界ですが、現在の日本には約1万社の旅行会社があり、観光産業という広範な業態を担っています。そして実際の店舗のみならず、インターネット上にも旅行会社はたくさん登場し、電子商取引を活用することで、これまでの旅行業界の仕組みと習慣を大きく変貌させています。

今の旅行業界のキーワードは「観光」と「IT」となっています。文系・理系問わず、就職活動中の学生に人気なのは、そんなキーワードが関係していたりもするのです。

基本情報

  • 市場規模:6兆6362億円
  • 労働者数:5683人
  • 平均年齢:36.9歳
  • 平均勤続年数:11.0年
  • 平均年収:481万円

同程度の市場規模を持つ広告業界の平均年収が739万円であることを考えると、平均年収は少ないと言っていいでしょう。

かつて、旅行業界といえば花形業界というイメージがありました。2005年のピーク時には平均年収が673万円あったので、約10年間で200万円近く減ってしまっていることになります。しかしこれは、近年の旅行という商品の特性によるところが大きいのです。

旅行商品の手数料は一定で、それだけでは十分な利益とはなりません。ですので利益を出すためには、ある程度の数の商品を仕入れる必要が出てくるのですが、旅行商品の供給量には限界があるのです。つまり、旅行業界全体で薄利多売という構図になってしまっているのです。

仕事内容

旅行自体にかたちはありませんが、「仕入れ」「加工」「売買」「管理」という基本は旅行業界も同じです。しかし、旅行者のために契約、媒介、取次をするだけではなく、旅行者とサプライヤー(航空会社やホテルなど)をつなぎ、両者に対して付加価値を作り出していくことがますます求めらるようになっています。

業界シェアランキング上位3位

1位:JTB:1兆3437億円
2位:HIS:5374億円
3位:KNT-CTホールディングス:4249億円

平均年収ランキング上位3位

1位:阪急阪神ホールディングス:896万円
2位:ANAホールディングス:789万円
3位:KNT-CTホールディングス:646万円

業界の動向

倒産と業界再編成

2015年の旅行業者総数は9884社で、前年比0.9%減になり、前年と続けて減少しています。

2008年の新型インフルエンザの世界的な流行や2011年の震災から、海外旅行・国内旅行ともに落ち込み、経営不振で倒産する企業が増加しましたが、現在でも旅行業界はその流れを引きずっている状態にあります。

KNT-CTホールディングスは近畿日本ツーリストとクラブツーリズムが経営統合して設立されました。2社のシナジー効果を発揮しながら、「訪日旅行」「地域誘客」「スポーツ事業」に事業シフトを加速し、新しいビジネスモデルの構築を目指しています。

最大手のJTBは、これまでJTB1社に資源を投入してきましたが、経営を大きく転換させて、会社自体を細かくグループ化し、そのグループ単位で細分化する市場に対応していく体制に移行しました。

訪日外国人観光客の増加

2015年の訪日外国人観光客数は2135万9000人(前年比45.6%増)で、過去最高だった前年の1341万3467人を大きく上回りました。国・地域別では中国が499万人で1位、2位が韓国で400万人、3位は台湾の367万人、4位には香港が入って152万人となっています。

そして訪日外国人旅行者数は、日本から海外への海外旅行者数(1621万2100人)を超えて、45年ぶりに逆転しました。

燃油サーチャージがゼロに

燃油サーチャージ(燃油特別付加運賃)とは、燃料価格が高騰したときに航空運賃とは別に乗客から徴収する制度のことで、全日空と日本航空で導入されていましたが、両社とも2016年4月よりゼロにしています。

これにより、海外旅行需要増加への期待が高まっています。

北陸新幹線と北海道新幹線

2015年に北陸新幹線が長野駅〜金沢駅間で営業を開始し、2016年には北海道新幹線が開通しました。

JR西日本によると北陸新幹線の利用者は開業して6ヶ月で前年比30%増、石川県や富山県の観光客も増加し、石川県内のシティホテルの客室稼働率が県全体で80%を上回るなど波及効果をもたらしています。

北海道新幹線は東京駅と新函館北斗駅を4時間(料金:2万2690円)で結んでいますが、羽田・函館空港間の航空機の場合、1時間20分(通常料金:3万5200円)程度でのアクセスが可能なため、旅行会社は北海道や東北を回る周遊コースの商品開発に力を入れています。

国内宿泊旅行の増加

観光庁によると、2015年の国内宿泊者数は5億545万人泊(前年比6.7%増)で、はじめて5億人泊を超えました。円安や、海外旅行を避けて国内旅行に変更する動きが増えたことと、北陸新幹線の開通が要因として考えられています。

都道府県別での人気は、1位東京、2位北海道、3位大阪、4位静岡、5位千葉となっています。

市場動向

訪日外国人の旅行消費額が大幅増

2015年の旅行売上高は総額で6兆6362億円で、前年比3.2%増となりました。市場別では、国内旅行が4兆4436億円で前年比8.3%増、海外旅行が2兆186億円で前年比8.4%減、外国人旅行が1742億円で前年比44.0%増となっています。

経済効果

環境庁「旅行・観光消費動向調査」によると、国内旅行における旅行消費額は国内全体で22.5兆円とのことです。

旅行消費がもたらす生産波及効果(産業全体にどれだけの効果が生じたのかを示したもの)は47兆円で、国民経済における産出額945.8兆円に対して5%にあたります。

雇用効果

雇用数で見た場合、直接効果は210万人と集計されていますが、波及効果では397万人とされています。この数字は、国民経済における就業者数全体(6514万人)の6.1%にあたります。

業界の課題

スキーバス転落事故

2016年にスキーツアーに向かうバスが長野県で転落事故を起こし、14人が死亡し、27人が重軽傷を負う惨事となりました。

ツアーを企画したのはインターネット専門の旅行会社でしたが、「激安」を売り物にする旅行会社と、受注したバス会社の労働条件の悪さや運行管理の杜撰さが問題になりました。

国交省は、バス事業参入時の審査や監査を厳しくして、違反行為への処分も厳格化することを決定し、再発防止に取り組んでいます。

国際情勢の影響を受けやすい業界

旅行業界は、戦争や政治情勢、災害、感染症の流行などによって甚大な被害を受けてきました。

2015年にはパリで同時多発テロが発生。パリをはじめ、ヨーロッパ行きの航空券やホテルは大量にキャンセルされ、航空会社やホテルなども含めて旅行業界に大幅な減収をもたらしました。

ドル高や好景気を背景に増加傾向にあった海外旅行需要は、このテロの発生で急激に落ち込んでしまい、旅行業界というものが改めて国際情勢の影響を受けやすいことを再認識させられる結果となりました。

IT化の弊害

インターネットは旅行業の機能や役割を大きく変えてしまいました。

旅館、ホテルなどの観光施設や、交通機関などの情報を旅行者自らが、いつでも無料で手に入れることができるようになりました。そして、旅行会社を介さなくても、旅行の手配まで旅行者自らで行うことが可能になりました。

つまり、航空券やホテル旅館などのサプライヤーも、旅行者に商品を直接販売できるようになったということでもあり、今まで旅行会社が担っていた手配や仲介といった業務の必要性の低下を招いています。

要は、旅行会社を経由しない旅行を選択する旅行者が増加傾向にあるため、旅行会社は、必然的にさらに付加価値のある旅行商品やサービスを提案・販売していかなければいけなくなってしまったのです。

20代男性の海外旅行離れ

20代の若者の海外旅行離れが深刻な事態となっています。

20〜29歳の海外旅行者数は、1996年の463万人から2006年の298万人と10年間で大きく減少しています。そのなかでもとくに減少が著しいのが20代男性で、2014年度の海外旅行者の割合は、女性が22.6%であったのに対して、男性は10.8%に過ぎません。

旅行会社が作成しているパンフレットにも「女子旅」をテーマにしたものはあっても、男子をテーマにしたものはほとんど存在していません。この20代男性を含めた20代の若者たちに新しい価値を持った旅行商品を提示できるかどうかは、これからの旅行業界の大きな課題の一つと言えるでしょう。

業界の今後の将来性

観光先進国となるために

政府は、2007年より施行された観光立国推進基本法に基づいて、2012年に東日本大地震からの復興も考慮に入れた「観光立国推進基本計画」を閣議決定し、訪日外国人旅行者数2000万人を目標に掲げてきました。

そして、2015年に訪日外国人旅行者数2000万人を達成しました。

2020年には東京オリンピックが開催されますが、政府は交通機関や宿泊施設の整備などを進めるとともに、それ以降の訪日観光客の増加や国内観光の活性化を目指し、2020年に訪日外国人旅行者数4000万人、2030年に6000万人という新たな目標を掲げています。

観光はGDP600兆円達成への成長戦略の柱に

2014年の外国人旅行者受入数でみると、1位のフランスが8370万人、4位の中国が5562万人、11位の香港が2777万人、12位のマレーシアが2744万人、14位のタイが2478万人、そして日本は1341万人で22位でした(2015年の訪日外国人旅行者は2135万人)。

これは、さらに多くの旅行者から収入を得ている国が多数存在していることとともに、日本がそうした観光先進国から学ばなければいけないことを示唆しています。

日本には豊富で多様な観光資源が存在していることは間違いないでしょう。しかし、それらを活用して多くの旅行者を呼び込む努力が不足しているのも事実です。各地の文化財や自然を質を保ちながら、旅行者の視点で整備して活用していくことが必要になります。

そして、外国人旅行者の受入環境を整備・充実させ、外国人旅行者の満足度をさらに高め、リピーターを増やしていかなくてはいけません。また、国内旅行も、観光地等のユニバーサルデザインを推進するなどして、障害者や高齢者を含めたすべての旅行者のために環境を整備しなければいけません。

政府は、アベノミクス第2ステージでGDP600兆円を2020年頃に達成することを目標に掲げ、「地方創生の本格化」などを対策に盛り込んでいます。これは、観光がまだまだ成長の余地を残しているということであり、これからの日本経済成長のための大きな柱になっていくということでもあります。

おすすめの業界研究本

『日経業界地図 2017年版』日本経済新聞社

日本経済新聞社の記者が徹底取材をして、日本の180業界の最新動向や課題、将来の見通しを解説しています。企業間の相関図、企業・製品のシェア、業界のトレンドを示す表やグラフがビジュアライズされており、業界のことが一目でわかるようになっています。業界研究をするにはまず目を通しておきたい1冊です。

『会社四季報 2017年 2集春号』東洋経済新報社

国内の全上場企業の業績予想を中心に、所在地から財務情報まで、会社のことを知るのに欠かせない情報をまとめたハンドブックです。就職活動における業界研究から、株式投資といったビジネスユースに至るまで幅広く使えるのが人気の理由です。

『旅行業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本』 中村恵二

発行が2016年と新しく、2011年の震災とその後のIT化の進む旅行業界や観光の現状をわかりやすく解説しています。地方創生はアベノミクスで掲げられたテーマの一つでもあるので、業界研究だけではなく、一般消費者にとっても読んでおいて損はない内容になっています。

業界研究をすれば、就活の戦い方がわかる

いかがでしたでしょうか。

この記事だけでも、業界の展望や各企業の力関係など、様々な発見があったかと思います。業界研究をせずに企業だけを調べても、業界全体の流れがわからず、狭い視野での企業研究になってしまいます。

自分の志望する業界は、かなりの時間を割いてでも研究するべきでしょう。

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