【業界研究】インターネット業界の現状・動向・課題について

インターネット業界の現状

インターネットの普及は広い範囲で進んでおり、過去5年の業界規模の伸び率も13.4%と高い数値を記録しています。インターネットの普及も年々増加していく傾向にあり、2015年にはパソコンを持っている人は76.8%、スマートフォンを持っている人は72%となっています。

パソコンの所有率は、2006年から10年ほど変わっておらず、普及率も大きな変化はなく上げ止まりですが、スマートフォンの所有率は2010年以降、右肩上がりで増加しており、スマートフォンでインターネットを利用する人の割合は、今後も増えていく見込みです。

インターネット業界の売上は、順調に増加しており、高い成長率を示しています。しかし、近年のインターネット普及率は83%前後で変化せず、これ以降も、国内での利用率の増加はあまり見込めません。それに合わせて、海外への事業拡大を狙う企業も多くあります。

現状1:基本情報

  • 業界規模:2兆287億円
  • 労働者数:2万3007人
  • 平均年齢:33.8歳
  • 平均勤続年数:4.2年
  • 平均年収:517万円

インターネット業界の業界規模は、他の業界と比べると決して大きくはありません。卸売り業界が88兆円、電気機器が80兆円の規模を持つのに対し、インターネット業界は2兆287億円です。

しかし、2007年までほとんど存在しなかったインターネット業界の生産額も、それ以降は順調に成長を続けており、衰退する業界が多い中、着実な成長を示しています。インターネット業界だけでなく、IT業界全体を見てみると、2016年は14兆7973億円の規模になり、十分大きな市場となっています。IT市場は2020年まで高い成長率を維持する見込みで、上がる事はあっても急速に衰えたりする見込みは、ほとんどありません。

業界に携わる人の年齢が若い事も特徴のひとつですが、もうひとつ気になるのは平均勤続年数の短さです。平均勤続年数の高い業界は、電力、石油、時計などで、18~20年の勤続年数を示しています。また、100の業界のうち50の業界は、平均勤続年数が14年以上となっています。それに対して、インターネット業界の平均勤続年数は4年ほどで、とても短くなっています。

この理由として、インターネット業界が登場してから日が浅く、十分な労働環境が構築されていないという原因があります。たとえば、プロジェクト毎に下請けに業務を丸投げしてしまう構造が蔓延していて、その構造の改善が難しいという状況があります。このような環境では、熟練技術者が育ちにくくなってしまい、まともな環境が形成されにくくなります。

また、業界トップの楽天が1997年の設立、2位のYahoo!が1995年に出来たばかりで、3位のディー・エヌ・エーは、1999年の設立です。このように、主要なインターネット企業が出来てから15年~20年ほどしか経過していません。当然そのような業界では、ビジネスモデルとしての労働環境が整っていない事に加えて、単純な勤続年数も短くなってしまいます。

また、仕事が厳しく給料が見合わないという理由も平均勤続年数が短い理由のうちのひとつであり、転職理由の18.8%が給与、11.9%が労働時間とされています。そのような理由によって、20代~30代の転職率が4割、40歳以上の転職率が5割と高い転職率を示している事も問題のひとつです。

現状2:業界シェアランキング上位3位

1位:楽天:売上 5185億円 売上高シェア 25.6%
2位:Yahoo!:売上 3862億円 売上高シェア 19%
3位:DeNA:売上 1813億円 売上高 8.9%

業界シェアのトップは楽天で、25.6%と高いシェアを記録しています。トヨタ自動車の売上が25兆6916億円、JR東日本の売上が2兆7029億円など、その他の業界と比べると、売上高は低くなっています。

しかし、インターネット業界は、登場してから日が浅く、急成長を見込める業界として注目されています。例えば、ランキング4位のガンホーは売上高が前年比531.8%増となっており、このようにインターネット業界は、まだまだ急成長が見込める分野となっています。

平均年収ランキング上位3位

1位:DeNA:751万円
2位:ニフティ:738万円
3位:エムスリー:730万円

他の業界と比べると、平均年収のトップ3も控えめな印象です。総合商社のトップ3では伊藤忠商事が平均年収1395万円、三菱商事が1375万円、三井物産が1361万円と高い年収を示しており、携帯電話業界でも、ソフトバンクグループが平均年収1100万円、KDDIが976万円、NTTドコモが847万円と、インターネット業界より高い水準にあります。

個別にみていくと、ディー・エヌ・エーの平均年収は、10年前約500万円だったのに対し、現在は751万円と順調に増加しています。10年で平均年収が増加した後、この4年くらいは、ほぼ横ばいで推移しており安定しています。企業の平均年齢が32歳と若い点が特徴ですが、その一方で、平均勤続年数2.9年という短さも気になります。

ニフティの平均年収は、変わらず700万円台で推移しています。10年近く変わらず一定なので、この先も極端に年収が下がるという事はないでしょう。平均勤続年数の短い企業の多いインターネット業界において、平均勤続年数が11年と長い点も特徴です。

エムスリーの平均年収は、10年前の840万円から少し減少傾向にあります。それでも、業界トップ3の地位を維持しており、十分高い水準です。年収の高さに魅力がある一方、平均勤続年数2.7年という短さが気になります。

業界の動向

インターネット業界の有望な市場として、電子商取引があります。2003年度には、消費者向け電子商取引額が3兆円、企業間電子商取引額は68兆円でした。それが、2010年になると、消費者向け電子商取引額が7兆7880億円まで増加しました。約7年で2倍の規模に成長する分野は、それほど多くはないと思います。そして、2015年には消費者向け電子商取引額が13兆7746億円、企業間電子商取引額が203兆円まで成長しました。

近年の国内のインターネット利用者数は、約1億人ですから、単純に計算して、一人あたり年間13万7000円のインターネット商取引をしている事が分かります。インターネット商取引の最大手である楽天が業界のトップに位置している事からも、電子商取引がインターネット業界で大きな地位を占めている事が分かります。

しかし、最近では宅配業者が、消費者向け電子商取引で注文された荷物の多さを理由に配送料金の値上げを検討しているなど、様々な動きが見受けられます。

市場動向

インターネットを利用する人の割合は、少しずつですが増加傾向にあり、特に最近はスマートフォンによるインターネット利用者数の増加が顕著です。スマートフォンの普及が始まったのは2010年頃からであり、当時の普及率は10%に満たないものでした。当時は、多くの人が、普通の携帯電話を使用しており、スマートフォンの影響力は微々たるものでした。

しかし、それがわずか5年後の2015年には72%まで上昇しており、この普及率は年々増加していく傾向にあります。それと同時に、タブレット端末の普及率も増加しており、2010年には7.2%だった普及率が、2015年には33.3%まで増加しています。このように、急速に普及しているスマートフォンとタブレット端末の影響により、インターネットに接する機会が増える事は確かです。

その中でも、インターネットの利用目的で、多くの人に利用されるのは、ソーシャルメディアの利用(約50%)、動画サイトの閲覧(約40%)、天気予報の確認(約50%)、ニュースサイトの利用(約40%)商品・サービスの購入(電子商取引)(約60%)といった項目が挙げられます。

電子商取引をする人の割合は、全世代に共通して高く、60歳以上のインターネット利用者でも40%の人が利用するまでになっています。電子商取引をする人の割合は、年々増加傾向にありますから、電子商取引に対してどのようなスタンスで取り込むかが、今後の課題となるでしょう。

インターネットの普及率は、2005年に70%だったのに対し、2015年には83%まで上昇しました。総利用者数は2012年に1億人を突破しています。利用者数も普及率も、少しずつですが上昇していく傾向にあり、学校の授業でパソコンが使用される機会も増えている昨今、若い世代のインターネット普及率は今後も上昇していく事でしょう。

特に、学校においてインターネットを活用させているかどうか、という調査では、50%以上の小学校で活用しているという実態があり、授業などでインターネットを利用して動画の閲覧、ウェブサイトの表示等を行っている所が、全体の65.3%あります。子供達がインターネットに触れる機会は、家庭内だけでなく学校でも増えていく事でしょう。

70代のインターネット利用率は50%前後、80歳以上のインターネット利用率が20%前後と低いのに対して、13歳から49歳までの日本人のインターネット利用率は95%を超える割合を示しており、30年後を考えると、若い頃からインターネットに触れてきた世代が人口の多くの部分を占めるようになり、インターネットの普及率は、さらに高くなっていくものと思われます。

その他にも、スマートフォンの販売台数は、世界規模でみてみると2011年に4億7000万台、2016年には13億台に達し、年平均22.5%の高い成長率を示しています。スマートフォンの利用については、今後高い成長が見込まれる分野です。

これにより、人口あたりのインターネット利用率以外にも、すきま時間にインターネットを利用する機会が増え、インターネットの総利用時間も増加しやすくなります。これに合わせてインターネットを利用する機会も増えていくものと思われます。

業界の課題

業界の課題としては、インターネット業界で成長産業であるインターネット販売(電子商取引)をどのように活かしていくかが大きなポイントであると言えるでしょう。消費者向け電子商取引が13兆円の大きな規模であるのに対し、企業間電子商取引の額は203兆円と、かなり大きな規模となっています。

しかし、このように規模が大きくなると、様々な問題も発生してきます。特に問題なのが、顧客データの流出、セキュリティ問題、偽物を売りつける悪徳業者の存在などが挙げられます。特に、インターネット通販(消費者向けの電子商取引)においては、年間20万件近いトラブルの相談が持ちかけられており、そのうちの5万件前後が商品の取引に関する相談です。

このように考えた時、今後成長が見込まれる電子商取引の安全性の向上、悪質販売によって失われるネット商取引の信頼性の回復、など、取り組むべき問題は多く存在しています。市場の拡大に合わせて、前述のように発生した宅配業者の許容限界の問題など、市場の拡大に対応できる仕組み作りが喫緊の課題であると思われます。

その他にも、早い技術革新にどのようについていくか、という問題があります。せっかく新しい技術を開発しても、5年で使われなくなる、といったケースもあります。新しい技術を学んでいく事には楽しさもありますが、新しい技術が次々と出てくると、それを学んでいかなければならない大変さも存在します。

そして、学びきれなくて、外部から人を雇ったり、下請けに丸投げするケースが増えていく事は、業界全体の問題であると思います。このような点にどのように取り組んでいくか、という事が、インターネット業界の課題であると言えるでしょう。

業界の今後の将来性

インターネット業界は成長産業であり、これから先も十分な成長が見込める将来性のある分野です。2008年から2013年にかけて、仕事の内容に対する満足感は改善する傾向にありますが、離職率の高さが大きな問題として存在しています。年功序列型のような安定志向の企業より、実力主義型の企業が多いのもポイントのひとつです。

2020年にかけては、インターネットオブシングス(IoT)の市場拡大が見込まれており、インターネット業界のさらなる需要拡大が進んでいく事が予想されます。自分の性格を考え、業界研究をしっかりと行い、IT関連企業に十分な興味を持っているなら、インターネット業界も選択肢のひとつとして魅力のある分野であると言えるでしょう。

おすすめの業界研究本

・図解入門業界研究最新インターネット業界のカラクリがよくわかる本[第2版] (How‐nual Industry Trend Guide Book)

2013年に発行されたインターネット業界を分析した業界研究本です。データが少し古いですが、インターネットに関する様々な情報が随所に納められており、インターネット業界がどのような推移を経てきたのか、インターネット利用者の推移や業界シェアについてなどが分かるようになっています。

インターネット業界に関する情報がよくまとまっており、業界の概要を詳しく知りたい人におすすめしたい一冊です。

・ECトップランナー8社が語るネット通販の未来+関連サービス250まとめ

インターネット業界で成長著しい電子商取引(EC)関連の著名人のインタビューが掲載されている本です。インターネット業界全体の業界研究には向きませんが、電子商取引に的を絞って調べたい人には便利です。業界のトップが、電子商取引の未来をどのように考えているのかが分かるので、業界研究にもうってつけです。